2016 Fiscal Year Research-status Report
進化的に保存される脳カラム構造形成メカニズムとその機能(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0263
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
下郡 智美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30391981)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2017
|
Keywords | 2光子イメージング / 発達 / 神経回路 / 分子メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにマウス体性感覚野に存在する皮質神経細胞(有棘星状細胞)は樹状突起を神経活動が高い方行に向けて生後に形態変化を起こすことを明らかにしている。さらにこの有棘星状細胞に特異的に発現する因子Btbd3が樹状突起の入力依存的な形態変化に必要であることも明らかにしている。しかし、神経活動がどのようにBtbd3の活動を制御し、選択的な樹状突起の形態変化を起こしているのかを明らかにする為には、in vivoの2光子顕微鏡での観察が必要となる。しかし、生後2日目の樹状突起のイメージングに成功している例は世界的にも皆無であるため、この技術開発には世界的にイメージングの技術水準が高いラボの指導のもとでのin vivoの2光子顕微鏡での観察を必要とする。そこでまず、実際に渡航して実験を行うためのプラスミドの構築、プラスミドの動作確認を行う必要がある。さらに発達段階の神経細胞で神経活動依存的に樹状突起の形態変化が起きるのかを確認しておくために、GCaMPのイメージングとRho/Rac FRETのイメージングを組み合わせて行えるのかin vitroで確認実験を行った。マウス海馬にGCaMPを子宮内遺伝子導入法で遺伝子導入し、初代分散培養を行ったあと経時的にGCaMPによるCa transientを計測した。さらにRaicuタイプのRho/Rac FRETを子宮内遺伝子導入法で遺伝子導入し、Rho またはRacの活性を計測できることを確認した。最後にRCaMPとの組み合わせにより、Ca transientのパターンとRho またはRacの活性の関連性を明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
発達過程で起こる細胞形態変化と近傍の神経細胞の挙動をspatially &temporally に解析するために、in vivoイメージングによる観察が必須であり、世界的にイメージングの技術水準が高いラボとの共同研究が有効であると考えられる。そこで、渡航前にin vivoイメージングで利用するプラスミドを作成し、これらのプラスミドが実際にイメージングを行う際に十分な蛍光強度を持っているかなどを予備実験で確認した。マウス海馬にGCaMPを子宮内遺伝子導入法で遺伝子導入し、初代分散培養を行ったあと経時的にGCaMPによるCa transientを計測した。さらにRaicuタイプのRho/Rac FRETを子宮内遺伝子導入法で遺伝子導入し、Rho またはRacの活性を計測できることを確認した。さらにRCaMPとの組み合わせにより、Ca transientのパターンとRho またはRacの活性を同時に測定できることも明らかにした。具体的には、幼若な神経細胞でCa transientの頻度が低い状態ではRhoの活性が上昇するが、神経細胞の発達とともにCa transientの頻度が上昇するとRhoの活性が抑制され、Racの活性が上昇することを明らかにした。今後はこれらの道具を用いて、in vivoでのイメージングをNYUのWenbiao Gan博士の研究室で行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに申請者が明らかにしてきた発達期における入力依存的なマウス体性感覚野での樹状突起の形態変化に関わる因子を用いて、視床からの入力を受ける大脳皮質の神経細胞の樹状突起のみに変化を与える。さらにこの上で近傍の神経回路の発達の様子を明らかにするために2光子顕微鏡によって経時的な観察を行う。これには発達期の幼若な仔マウスのイメージングを行う必要があるために、NY大学のWenbiao Gan教授の元、共同で技術開発を行う。さらに本研究計画においては大脳皮質4層細胞の樹上突起の形態を変化させた上で、同時に近傍の神経細胞にも必要なラベル(蛍光タンパク、カルシウムプローブなど)を入れるなど、限定された領域に効率よく遺伝子導入を行う必要があるため、子宮内遺伝子導入法の経験が豊富な申請者がNY大学で実験を行う。さらには、4層細胞とそれに入力する視床軸索の動態観察も必要となるが、視床細胞への遺伝子導入は申請者の研究室では高い成功率を持つ事からこちらも実際に実験を行う。遺伝子導入とイメージングの高い技術を持つ両方の研究室が共同で実験を行い、これまでに困難であった発達期の軸索、樹状突起、スパインの観察を行い、外部入力によって編成される回路の様子を明らかにする。
|