2017 Fiscal Year Research-status Report
重イオンビーム欠失変異マッピングによる組換え抑制領域からの有用遺伝子同定(国際共同研究強化)
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15KK0264
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 裕介 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (80442945)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 重イオンビーム / 雌雄異株植物 / ヒロハノマンテマ / 性染色体 / 性決定 / Y染色体進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄異株植物ヒロハノマンテマは、570 Mbと巨大なY染色体をもつ。Y染色体には、めしべの発達を抑制するGSFと、おしべの発達を促進するSPFとの、2つの性決定遺伝子の存在が推定されているが、これらの遺伝子がどのように獲得されたかはわかっていない。 XY染色体が出現したのはわずか1000万年前であり、これはほ乳類の性染色体の出現が1億6千万年前であるのと比較して新しい。そのため、1000を超える相同遺伝子対がXY間で保存されている。2つの性決定遺伝子が同定できれば、相同性比較や構造比較により性染色体の構築過程を知ることができる。 オス個体、メス個体、および両性花変異体2個体からゲノムDNAを抽出し、高速シーケンスを行なった。獲得したリードを35bpの長さにコンピューター上で切断し、それぞれの断片を網羅的に比較することで、「オスに存在するが、メスおよび両性花変異体2個体には存在しない」リードを得た。これらのリードをアセンブルしたところ、オス特異的な67481個のコンティグを得た。このうちオスのつぼみで発現するコンティグは1749個であった。さらに、オス、メス、両性花変異体2個体について、直径0.5mm以下の極小さな蕾をサンプリングしてRNAseq解析を行なった。得られたリードおよびゲノムシーケンスのリードを1749個のコンティグにマッピングすることで、「オスに存在し発現するが、メスおよび両性花変異体2個体では存在せず発現しない」コンティグを絞り込んだ。得られたコンティグをもとにプライマーを設計し、14個体の両性花変異体に共通して存在しないコンティグを絞り込むことで、GSF遺伝子の候補を得た。現在、無性花変異体の原因遺伝子SPFについても同様の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膨大な数のコンティグから候補を絞り込むためのバイオインフォマティクスにおいて、様々な条件検討を行なう必要があった。X染色体に不活化した性決定遺伝子のホモログがある場合や、両性花変異体が塩基置換などの小規模変異を持つ場合を想定すると、「オスに存在するが、メスおよび両性花変異体2個体には存在しない」という条件を設定すると性決定遺伝子の候補を取りこぼしてしまう恐れがあるためである。最終的にはゲノムシーケンスを用いた絞り込みでは取りこぼしのないように条件設定し、RNAseqを用いた絞り込みでは厳密な選抜を行なうこととした。本条件設定に時間を要したが、この条件を用いれば、SPF遺伝子の絞り込みも行なうことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
GSF遺伝子の候補については、in situ ハイブリダイゼーションで発現パターンを確認する。さらに、現在開発中の手法を用いて遺伝子機能解析を行なう。 SPF遺伝子については上記の手法で候補遺伝子を絞り込む。
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Research Products
(4 results)