2016 Fiscal Year Research-status Report
変態期ヒラメで左右非対称に発現する遺伝子群の単離と甲状腺ホルモン制御機構の解明(国際共同研究強化)
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15KK0272
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横井 勇人 東北大学, 農学研究科, 助教 (40569729)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 異体類 / 変態 / 大西洋イシビラメ / トランスクリプトーム / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒラメやカレイなど異体類は、左右対称な仔魚として発生した後、変態期に眼の移動と有眼側の色素胞分化により、左右非対称な成魚の体制へと移行する。ヒラメなど水産重要種では種苗生産が行われているが、人工飼育下では変態の異常が発生して問題となっている。本研究は変態の分子メカニズムを理解することにより、増養殖の高効率化を目指している。スペインの国立海洋研究所(スペイン・ビーゴ)のJosep Rotllant博士は、大西洋イシビラメの変態について研究しており、我々の日本産ヒラメのデータと比較検討することにより、異体類の変態の普遍的な分子メカニズムを解明する。ハイデルベルグ大学のMatthias Carl博士はゼブラフィッシュの左右軸分化について顕著な成果を上げており、本共同研究ではヒラメの左右非対称化についてモデル生物を用いて解析する。バルセロナ大学のCristian Canestro博士は体制が単純な脊索動物オタマボヤの円柱を研究している。異体類の変態を制御する甲状腺ホルモンは、円柱の相同器官で生成されることから、単純な体制のオタマボヤで甲状腺ホルモンシグナリングについて解析する。 2016年度は、Carl博士の研究室では、ヒラメ眼上棒状軟骨で左右非対称に発現する遺伝子のゼブラフィッシュ・オーソログを単離し、発現解析を行った。Canestro博士の研究室では、オタマボヤのゲノム情報を参考にしてオタマボヤが進化的に喪失/維持してきた甲状腺ホルモンシグナルネットワークについて解析した。Rotllant博士の研究室では大西洋イシビラメのゲノム情報を利用してヒラメのトランスクリプトーム解析で単離された遺伝子のターボット・オーソログを単離し、組織切片の作成、in situ hybridizationによる組織発現を解析することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、ドイツとスペインの3機関について、合計2か月と短い滞在であったが、それぞれ充実した実験を行うことができた。ハイデルベルグ大学とバルセロナ大学では公開セミナーを実施し、本共同研究の内容について様々な研究者から有益な助言を得ることができた。ハイデルベルグ大学のCarl博士の研究室では、これまでのヒラメのトランスクリプトーム解析で同定された候補遺伝子について、ゼブラフィッシュ・オーソログをクローニングし、whole mount in situ hybridizationにより発現解析を行った。また硬骨・軟骨の酸性二重染色について、従来法と比較しながら条件検討を行うことができた。バルセロナ大学のCanestro博士の研究室では、複数の学生を交えて、活発に議論することができた。公開されているオタマボヤゲノムを利用して、重要遺伝子のオタマボヤ・オーソログの単離を試みた。これらはまだ完了はしていないが、引き続き解析を進める予定である。スペイン・ビーゴの海洋研究所のRotllant博士の研究室では、あらかじめサンプリングを依頼していた予定時期の固定サンプルを使用して、我々が日本で行っている方法でパラフィン包埋と切片in situ hybridizationを行った。先方のラボのプロトコールと若干の違いがあったため、結果をふまえて今後の実験計画について検討した。今後はサンプルを増やして実験し、日本のヒラメと比較検討を行うことにより、変態の普遍的なメカニズムについて理解を深めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本産ヒラメと比較研究を行うヨーロッパの大西洋イシビラメは、サンプルを入手できる時期が限られるため、2017年度および2018年度に分けて渡航し実験を行う予定である。2017年度はスペイン、ビーゴのスペイン海洋研究所に滞在し、Rotllant博士との共同研究を進める。昨年度にクローニングした、日本産ヒラメのトランスクリプトーム解析で得られた重要遺伝子の大西洋イシビラメ・オーソログについて、配列の比較解析と、切片in situ hybridizationによる組織発現の解析を行う。日本で実施していた実験と実験条件が若干異なるため、遺伝子発現の検出感度について、慎重に検討する必要がある。 ハイデルベルグ大学のCarl博士は、所属を移動する可能性があるため、2017年度の渡航は行わず、メールによるディスカッションを密に行いながら、それぞれ実験を行い、2018年度に訪問して共同実験を行う。 バルセロナ大学のCanestro博士は訪問について調整中であり、今年度は予定が許せば、スペインのビーゴ滞在の前後に訪問し、甲状腺ホルモンシグナル伝達に関与する遺伝子のオタマボヤ・オーソログのクローニングと解析を行う。
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Research Products
(9 results)