2017 Fiscal Year Research-status Report
変態期ヒラメで左右非対称に発現する遺伝子群の単離と甲状腺ホルモン制御機構の解明(国際共同研究強化)
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15KK0272
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横井 勇人 東北大学, 農学研究科, 助教 (40569729)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 異体類 / 変態 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒラメやカレイなど異体類は、左右対称な仔魚として発生した後、変態期に眼の移動と有眼側の色素胞分化により、左右非対称な成魚の体制へと移行する。ヒラメなど水産重要種では種苗生産が行われているが、人工飼育下では変態の異常が発生して問題となっている。本研究は変態の分子メカニズムを理解することにより、増養殖の高効率化を目指している。スペインでも水産増養殖が盛んに行われているが、異体類の養殖では体色異常や骨格異常が発生して問題となっている。スペイン国立海洋研究所CSIC(スペイン・ビーゴ)のJosep Rotllant博士は、大西洋イシビラメの変態について研究しており、我々の日本産ヒラメのデータと比較検討することにより、異体類の変態の普遍的な分子メカニズムを解明する。ハイデルベルグ大学のMatthias Carl博士はゼブラフィッシュの左右軸分化について顕著な成果を上げており、本共同研究ではヒラメの左右非対称化についてモデル生物を用いて解析する。バルセロナ大学のCristian Canestro博士は体制が単純な脊索動物オタマボヤの円柱を研究している。異体類の変態を制御する甲状腺ホルモンは、円柱の相同器官で生成されることから、単純な体制のオタマボヤで甲状腺ホルモンシグナリングについて解析する。 これまでの訪問を通して、オタマボヤのゲノム情報を参考にしてオタマボヤが進化的に喪失/維持してきた甲状腺ホルモンシグナルネットワーク、および色素胞分化関連遺伝子について解析した。またヒラメのトランスクリプトーム解析で単離された遺伝子のターボット・オーソログを単離し、in situ hybridizationによる組織発現を解析することができた。Rotllant博士が樹立したゼブラフィッシュのトランスジェニック系統および遺伝子破壊系統を使用して色素胞分化関連遺伝子の機能解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度はスペイン国立海洋研究所のJosep Rotllant博士およびスペイン・バルセロナ大学遺伝学研究部門のCristian Canestro博士の研究室を訪問し、それぞれ共同研究を実施した。 Rotllant博士は大西洋イシビラメをモデルとした骨格と色素胞分化の研究、およびゼブラフィッシュをモデルとして様々な遺伝子のCRISPRミュータント系統およびトランスジェニックを作成し、遺伝子機能の解析を行っている。我々がヒラメのトランスクリプトーム解析で単離した色素胞分化への関与が予想される幾つかの遺伝子についてゼブラフィッシュオーソログを単離し、Rotllant博士のミュータントおよびトランスジェニック系統における遺伝子の影響について検討した。 Canestro博士の研究室では甲状腺ホルモン関連遺伝子に加えて、色素胞分化関連遺伝子についてオタマボヤにおける進化的喪失/維持について解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本産ヒラメと大西洋イシビラメの比較検討から、変態期の眼の移動前後の、眼球周辺領域における軟骨・硬骨の分化状態は、両種間で異なっていることがわかってきた。ヒラメでは左右対称に軟骨が形成された後、眼の移動に先立って右側のみで軟骨の退縮が起こることが知られているが、イシビラメでは左右対称な仔魚期に、眼球周辺にはすでに硬骨が形成されていた。眼の移動期に硬骨がどのような挙動を示すか、組織学的な解析を行い、ヒラメのトランスクリプトーム解析で単離された遺伝子の発現と比較検討する。 色素胞分化関連遺伝子については、ゼブラフィッシュのミュータント系統によるloss-of-functionとトランスジェニック系統によるgain-of-functionの両面から、分化制御シグナルとの相関を解析する。 オタマボヤは、in situ hybridizationによる発現解析と顕微鏡観察について、Canestro研究室で蓄積されたノウハウを習得し、帰国後に実施できるようにする。
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Research Products
(20 results)