2016 Fiscal Year Research-status Report
複合微生物系におけるプラスミドの「真の」宿主域の解明(国際共同研究強化)
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15KK0278
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
新谷 政己 静岡大学, 工学部, 准教授 (20572647)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 宿主 / 接合伝達 / 嫌気性細菌 / 複合微生物系 / FISH法 / プラスミドキャプチャリング |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミドは,接合伝達により供与細胞から受容細胞へと移動し,それを受け取る接合完了体(=宿主)の形質を大きく変える遺伝因子である.基課題では実環境中に普遍的に存在する,微好気・嫌気環境におけるプラスミドの伝播現象を理解し,プラスミドが実際に伝播する宿主の種類を明らかにすることを目指し,本研究課題では,その伝播現象の追跡手法の精度と確度を,オーストリア・ウイーン大学のMichael Wagner博士との共同研究によって,より高めることを第一段階の目的とした.本年度は,その準備段階として,プラスミドDNA自体を検出する改良FISH(fluorescence in situ hybridization)法の確立に必要な材料の構築と,条件検討を行った.接合伝達性プラスミドの多くは,微生物細胞内におけるコピー数が比較的低く(1-10コピー程度),通常のFISH法が10^3~10^5コピーのribosomal RNAを対象としていることを考慮し,モデルプラスミドpBP136を特徴付ける複数の遺伝子を選び,高コピーのベクターにクローニングしたプラスミドをターゲットとした.また,共同研究先のウイーン大学には既に複数回訪問し,上記手法について実施する体制を整えた.また,基課題では,プラスミドキャプチャリング法によって,嫌気発酵槽内の汚泥より得られた不和合性群PromAプラスミドに類似した新規プラスミドを得ることに成功した.ドイツ・ブラウンシュバイクにあるJulius-Kuehn InstitutのKornelia Smalla博士らは,当該手法と類似の方法で,土壌より様々なプラスミドを取得しており,共同研究によって,代表研究者らのプラスミドと合わせて,プラスミドがその配列からどのような役割をもつのか,またその宿主域を予測する研究を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度,オーストリア・ウイーン大学のMichael Wagner博士との共同研究によって,改良FISH法の確立に向け,既に高コピープラスミドを用いたモデル系では,FISHのシグナルの検出に成功しつつあり,基課題でも用いている実際の低コピーのプラスミドについても検出が可能か試みているところである.コピー数が低くなることによるシグナル低下を克服するために,HCR-FISHのプローブ数を増大させるほか,試料の前処理が煩雑になるものの細菌細胞内の一遺伝子を検出可能なGene-FISHにも着手しており,渡航後に一層の進捗が見込まれる.また,基課題では,微好気・嫌気条件下におけるメタン発酵を担うグラニュールや,牛糞などの複合微生物系内で,蛍光タンパク質を利用した手法によって,接合完了体の検出に成功しつつあり,本課題との連携が見込まれる.一方,安定同位体を用いたプラスミドDNAを検出する試みについては,まだ着手していないが,共同研究先の研究施設について,講習を受けた後に利用する予定である.また,当初計画では予定していなかった,Julius-Kuehn InstitutのKornelia Smalla博士らとの共同研究も開始しており,国際共同研究として順調に進捗していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,前年度に高コピープラスミドの検出に成功したHCR-FISH法を,実際の低コピーの接合伝達性のプラスミドにも適用可能かどうか,Gene-FISH法と併せて検証する.さらに,基課題で得られた新規プラスミドや,接合伝達の認められた複合微生物系についても,同様に当該FISH法で検出できるか検証する.また,基課題で得られた各プラスミドの宿主域の情報を合わせて,どの細胞がプラスミドを獲得したのかを視覚化できるか検証する.また,ウイーン大学に渡航後,安定同位体を用いたプラスミドの伝播現象の追跡についても着手する.
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Research Products
(9 results)