2018 Fiscal Year Research-status Report
種子脱粒性の喪失によるイネ栽培化過程の実験的検証(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0280
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 亮 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70467687)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | イネ / 栽培化 / 脱粒性 / 植物考古学 / 植物遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの作物において、種子脱粒性の喪失は栽培化初期に選抜対象となった重要な形質である。イネにおいても、脱粒性をもたらす種子基部の離層形成に異常の生じた変異が選抜されたと考えられ、脱粒性を支配する2つの主要遺伝子座(qSH1とsh4)がこれまでに報告されている。また、qSH3座における変異も重要な役割を果たした可能性がある。これら3遺伝子座と他の未知の変異がイネの脱粒性の喪失にいつどのように関与したかについては時系列的な情報が乏しい。本研究では、脱粒性の喪失に関与した遺伝子変異を追跡し、共同研究先である植物考古学研究者らとの相互考察によってイネの栽培化過程を推定するための基礎的知見を獲得することを目的とした。 種子脱粒性の低下に関与した未知の遺伝子座における変異を探索するためにインディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた。これまでに同定した3遺伝子座の効果検証を進めているが、候補となる領域は染色体の約半分を超えるなど領域の限定化において困難な状況が伴っている。このため実験材料の調整を進め、野生イネを遺伝背景として持つ実験系統を整備した。 また、平成30年10月26日から平成31年3月31日まで、ロンドン大学考古学研究所に滞在し、イネの栽培化における植物考古学を専門とする共同研究者とイネ遺物からの古代DNAの抽出実験のセットアップを行った。実験はWarwick大学の共同研究者の所有する専用のDNA解析実験室で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
インディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた新規脱粒性遺伝子座の探索では、次世代シーケンサーを用いたQTL-seq解析に3つの遺伝子座が関係している可能性が示唆された。このためそれらの遺伝子座効果を検証するために、野生イネの遺伝背景を持つ系統の作出と評価を進めたが、遺伝子座の数が想定以上に多く時間を要した。平成30年度は野生イネの遺伝背景において、これら各遺伝子座の効果を単独で評価することが可能な実験系統を作出することができた。また、これらの遺伝子座並びに基地遺伝子座における変異についてイネの考古学サンプルからのDNA抽出と遺伝子型判別を共同研究先と進めるため、ロンドン大学考古学研究所とウォーリック大学に滞在し、DNA抽出の実験系整備を進めた。しかしながら、炭化米からのDNA抽出が安定して確立できておらず実験系の構築に時間を要している。このため、進捗状況は遅れていると判断し、また補助期間延長手続きを申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
インディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた新規脱粒性遺伝子座の探索では、野生イネ遺伝背景の各実験系統から採種した自殖種子について、候補領域上に座乗するDNAマーカーを用いて栽培・野生イネ由来の染色体断片を判別する。これらの後代検定によって新規遺伝子座の種子脱粒性への効果の検証を行う。考古学サンプルからのDNAの抽出については、炭化米サンプルからDNAの抽出について、炭素材とDNAの吸着・回収が解決すべき点であると考えており、重点的に実験を計画している。また、共同研究先とイネの栽培化関連遺伝子群の遺伝子型判別を効率的・経済的に進めることが可能な実験系の構築を行い、次世代シーケンサー用いた解析を進めることを計画している。
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