2017 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子組換えイバラキウイルスを用いた二本鎖RNAウイルス感染・複製機序の解明(国際共同研究強化)
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15KK0281
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 二本鎖RNAウイルス / 粒子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、ブルータングウイルス(BTV)構造タンパク質であるVP6とVP3の結合についてさらに詳細に解析した。前年度までに、VP6のVP3結合領域と結合に特に重要なアミノ酸の同定ならびに、VP6-VP3結合のBTV複製、特にゲノムの取り込みにおける重要性については明らかにしていた。本年度はさらに、VP3結合に関与する 281番目のアルギニン、285番目のチロシン、286番目のフェニルアラニンをアラニンに置換した「VP3結合能力欠損VP6」を有する遺伝子組換えBTVを用いて、「変異VP6が、BTV粒子に取り込まれない」こと、「ウイルスゲノムだけでなく、VP1およびVP4も粒子中には取り込まれない」こと、「変異VP6は、感染細胞内で粒子形成の場であるウイルス封入体(VIB)へ移行出来ない」ことを明らかにした。また、変異BTVを野生型VP6(VP6 wt)恒常発現細胞(BSR-VP6)に感染させると、多くの中空粒子が出来ることが分かった。先行研究で作製したVP6の大部分を欠損したVP6欠損変異BTVをBSR-VP6に感染させた場合は、このような中空粒子は、観察されなかった。よって、アミノ酸変異によってVP3結合能力のみを欠損させたVP6は、他の機能・構造は維持しているため、VP6 wtと競合したことが示唆された。以上の成果をまとめ、Journal of Virologyに発表した。 次に、赤色蛍光タンパク質でVP6標識したIBAVを用いて、感染細胞内でのVP6の動体を観察したところ、VP3結合に関与していると考えられている3つのアミノ酸のうち、チロシンおよびフェニルアラニンを両方ともアラニン置換した場合、VP6はVIBへ移行しないが、どちらか一方のみを置換した場合は、複製能力はないが、VIBには移行出来ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に作製に成功していた、「ゲノムを取り込むことはできないが、構造を維持し、粒子中に取り込まれるVP6」を持つBTVの大量精製およびクライオ電子顕微鏡解析を行う予定であったが、使用する予定であったロンドン大学(LSHTM)の施設が保守点検等のため、使用不可能となったため、遂行することができなかった。しかし、当初予定していた、IBAVの動体解析に着手し、新たな知見を得ることができた。また、これまでの成果を発表することができたので、概ね順調に進んで言えると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、H29年度に予定していた、クライオ電子顕微鏡解析に着手する予定である。また、BTV、AHSVを用いたマウス肝細胞(NMuLi)でのオルビウイルス抑制機序について、解析を進める予定である。尚、H30年度は、長期に渡英することは出来ないため、予定していたNMULi細胞におけるIBAV以外のオルビウイルスの長期持続感染実験は、AHSV、BTVの代わりに、近年新たに日本のダニから分離されたオルビウイルス、ムコウイルス(MUV)を用いて、日本で行う予定である。更に、BTVなどでも、機能的な蛍光タンパク質標識VP6を持つウイルスを作製し、VP6の動体解析を行う予定である。
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Research Products
(7 results)