2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒュウガナツ‘西内小夏’の非還元花粉形成機構の解明とそのカンキツ育種への利用(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0285
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 園芸学 / カンキツ / 自家不和合性 / 果樹 / 非還元花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒュウガナツ(Citrus tamurana)は強い自家不和合性を持っているが,その枝変わり品種である‘西内小夏’は自家受粉によって結実する.この性質は‘西内小夏’が生産する非還元花粉が,不和合性を打破するためであることが明らかになっている.本研究ではこの自家不和合性のメカニズムに関する知見を得るために,実験を行った. ヒュウガナツ同様自家不和合性であるクレメンティンを材料に,バラ科植物などの自家不和合性の雌ずい側因子であるT2型RNase遺伝子のカンキツの自家不和合性への関与の検証を試みた.公開されているクレメンティンゲノムデータベースより,合計7種類のT2型RNaseの配列を得た.これら遺伝子と既に獲得されているヒュウガナツ花柱で発現しているRNase遺伝子5種類について,発現の組織特異性をRT-PCRによって確認したところ,clementine0.9_35888m(以下35888)とHyuganatsu_RNase1(以下HyRNase1)が雌ずいで特異的に発現していることが明らかとなった.次にこれらについて,イントロンの調査を行った結果,イントロンがHyRNase1には一箇所存在したが,35888には存在しないことが明らかとなった.また,HyRNase1には異なる二種類の配列がゲノム内に存在していた.さらにアミノ酸配列を基に等電点を予測したところ,共に塩基性を示すことが確認された.35888について,クレメンティンとヒュウガナツ,およびクレメンティン×ヒュウガナツの交配により得た実生74個体についてその保有の有無を調査し,遺伝様式を確認した.その結果,ヒュウガナツは35888を保持しておらず,その実生では,35888を保持する個体と保持しない個体がほぼ1:1の比で分離したことから,クレメンティンは35888をヘテロ接合で保持していることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実際的な研究の準備段階として,共同研究先との渡航時期の打ち合わせを行い,その後に交付申請を行った.そのために実施した実験は,クレメンティンを用いたT2型RNaseの解析や予備的に獲得したNGSデータの解析に止まっている.しかしながら,これは想定されていたことで,NGSデータ取得用のサンプリングは研究計画当初より次年度初期の開花時期に行うことを予定しており,大幅な遅れではないと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はヒュウガナツおよびその自家和合化変異個体を用いて,トランスクリプトーム解析を行う予定である.4月下旬の開花時期に,両系統の開花直前段階の花より花柱を採取する.また,自家和合化変異個体の変異発生が,自家不和合性を支配する遺伝子そのものに起こっているのか,あるいは自家認識以降の下流の花粉管伸長抑制反応に関与する遺伝子に起こっているのか現時点で不明であることから,ヒュウガナツと自家和合化変異体のそれぞれに,自家受粉,他家受粉を行い,受粉後96時間後の花柱を採集し,解析用のサンプルとする.これらのサンプルからtotal RNAを抽出し,次世代シークエンス解析によって,シークエンスリードデータを得る.これらのデータを共同研究者のフロリダ大学Fred Gmitter教授のラボにおいて協同で解析を行い,発現量の差異や変動が見られる遺伝子を抽出し,自家不和合性に関与する遺伝子の同定を試みる予定である.また,同じく自家不和合性を示すハッサクの花柱より予備的に構築したRNA-seqデータより,いくつかのT2型RNase遺伝子の発現を確認している.これらの遺伝子についても,組織毎の発現解析や,ゲノム構造の調査を行う予定である.
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