2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒュウガナツ‘西内小夏’の非還元花粉形成機構の解明とそのカンキツ育種への利用(国際共同研究強化)
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15KK0285
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | カンキツ / 自家不和合性 / 果樹 / 受粉 / 受精 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,日本においてカンキツの開花シーズン(4月下旬~5月上旬)に,自家不和合性であるヒュウガナツとその自家和合系統を用いて,受粉並びに花器官(花柱)のサンプリングを行い,解析用のサンプルを採取した.また,それらのサンプルから全RNAを抽出し,RNAseqを行いシークエンスデータを獲得した.そのデータならびにcDNA,RNAサンプルを持って,海外渡航先であるフロリダ大学に2017年11月より渡航した.フロリダ大学では,RNAseqデータの解析を共同研究者のGmitter教授と行い,現在解析を進めている. これまでに自家不和合性をもつヒュウガナツ(HYSI)とその自家和合変異系統(HYSC)の花柱RNAseqデータをde novo assemblyによって花柱で発現しているtranscriptを構築した.次に構築されたtranscriptの塩基配列より,blast検索ならびにInterProScan検索によって,各transcriptがコードするタンパク質の機能予測を行った.一方で,構築されたtranscriptを参照配列として,HYSIとHYSCのリードデータをマッピングして,そのカウントデータから両者において発現量の異なるtranscriptの同定を試みた.その結果,約80のtranscriptが発現量に差があるもの(DEG)と判定された.その中には,他植物で自家不和合性を制御する因子と考えられている,T2型RNase遺伝子と予測されているものも含まれていた. さらにフロリダ大学において保存されている遺伝資源を用いて,2018年2月~3月にかけて自家不和合性品種Fortuneに,その親品種であるOrlandoとClementineを交配した.また,それらの各品種の花柱サンプルを採取し,RNAを抽出した.これらのサンプルの解析を次年度に行う予定としている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航前に日本において解析用のサンプル採取並びにシークエンスデータの獲得を行い,それを持ってフロリダ大学に渡航するという,当初の計画通りに進行している.フロリダ大学渡航後もデータ解析に着手し,ある程度進行していることや,次年度に向けての現地でのサンプル調製も行っていることから,進捗状況は問題ない.また,日本においても代替要員として雇用した研究員と連携し,日本におけるカンキツの開花時期に向けて,受粉・サンプリング計画を検討し,ヒュウガナツなど渡航先において得ることができないサンプルの採取についても準備を進めている.以上の点から,おおむね順調に進行していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒュウガナツのHYSI,HYSC系統の花柱のRNAseq解析より,いくつかの発現変動遺伝子(DEG)が検出され,その中に他植物において自家不和合性に関与すると考えられるT2型RNase遺伝子が含まれていた.今後は,この遺伝子の特徴付けを進める予定である.また,HYSI,HYSC系統それぞれにHYSI花粉を受粉した花柱サンプルのRNAseqデータも獲得しており,それについても自家不和合反応と,それが打破されたときの発現変動遺伝子のネットワーク関係を明らかにする予定である. 渡航先のフロリダ大学では,自家不和合系統である品種Fortuneと,その親品種であるOrlandoとClementineを戻し交雑し,現在その果実が成長している段階である.また,Fortune,Orlando,Clementineからそれぞれの花柱を採取し,RNAを抽出した.このRNA用いてRNAseq解析を行って,これらの花柱で発現している転写産物配列を獲得する予定としている.自家不和合性品種にその親を戻し交雑すると,自家不和合性反応により,種子親と一致する自家不和合性遺伝子型を持つ花粉の花粉管伸長は阻害され,実生に遺伝しない.この現象を利用して,いくつかの遺伝子についてその遺伝様式から自家不和合性への関与を検証する予定である.
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