2016 Fiscal Year Research-status Report
樹幹へのミネラルの取り込みと移動経路のクライオSEM/EDXを用いた直接的解明(国際共同研究強化)
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15KK0287
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
黒田 克史 国立研究開発法人森林総合研究所, 木材加工・特性研究領域, 主任研究員 (90399379)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | ミネラル / セシウム / クライオSEM / SEM/EDX / 蛍光エックス線 / ヨーロッパシンクロトロン / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木は、多年に渡り健全な成長を続け大径になるための戦略として、根から吸収したミネラルを師部や辺材の生活細胞に取り込み樹体内に蓄積するとともに、当年までに取り込んだ成分を木部に蓄積し翌年以降にも利用する機能を持つ。この機能に木部柔細胞が深く関わると考えられている。本研究の基課題(H25-27年度科研費)では、樹幹放射方向のミネラルの移動経路が主として放射柔細胞であることを実験的に明らかにした。一方で、ミネラルの移動に関与する放射柔細胞の微細構造は明らかにできておらず、また師部から木部への移動の経路の実態も解明に至っていない。そこで本研究では、師部と木部のミネラルの移動の実態を可視化技術によって解明することを目的とする。 本年度は、ヨーロッパシンクロトロン(ESRF)・ID21ビームラインのマイクロ蛍光X線分析装置を用いて樹木のミネラル移動の可視化手法の開発を行った。この装置は凍結試料の測定が可能なため、水を含んだ状態の樹木のミネラル分布解析が期待できる。装置を使用するためには、ESRFへ課題提案を行い採択される必要がある。そのため、まず、共同研究者のJyske博士(フィンランド・Luke)とともにESRF・ID21ビームラインの使用計画を立て、課題を申請した。その結果、提案課題が採択されたため、続いてビームラインの担当研究者と実験の詳細について打ち合わせを行った。ESRFでの実験には、安定同位体セシウムを立木の幹に注入し、立木凍結法で採取したスギを試料として用いた。凍結を維持した状態で解析するための試料の前処理方法や測定条件を検討して解析を行った結果、基課題で解析できなかった低濃度の試料においても、注入したセシウムのマッピングに成功した。現在、ヘルシンキ大学工学部のグループが開発した画像処理技術を用いて詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題遂行上重要な実験であるヨーロッパシンクロトロンにおけるマイクロ蛍光エックス線分析装置を使用するためにはヨーロッパシンクロトロンへの課題の申請と採択が必要である。共同研究者のJyske博士とともに申請した課題が採択され、当初の計画通りに実験を行うことができた。また画像処理が専門のヘルシンキ大学工学部のグループと共同研究を開始し、得られた結果の解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパシンクロトロンID21ビームラインのマイクロ蛍光エックス線分析で得られたデータについて、ヘルシンキ大学工学部のグループが開発した画像解析手法を用いてミネラルの詳細な局在解析を行う。さらに、ヨーロッパシンクロトロンに継続実験課題を申請し、今年度に検討した条件を用いてさらに解析を行い、ミネラル移動を三次元的に解析する方法を検討する予定である。
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Research Products
(1 results)