2017 Fiscal Year Research-status Report
リバースジェネティクス法を用いたエボラウイルスの病原性解析(国際共同研究強化)
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15KK0291
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 祥美 北海道大学, 医学研究院, 講師 (70447051)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | ウイルス / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エボラウイルスに感染すると免疫抑制傾向、全身性炎症反応に加えて血液凝固系の破綻を起こし、全身性ショックにより死に至る。これまでの研究からエボラウイルスの主要標的細胞がマクロファージや樹状細胞などの単核性食細胞系であるとされているが、これらの細胞がエボラウイルス感染の致死的病態にどのような役割を果たしているか、また致死的病態にどのように関与しているのかは未だ不明である。本課題ではBSL4施設を有する海外の研究施設に滞在して、まずエボラウイルスを実際に用いた研究を集中的に実施した。前実験として作出したmicroRNAのターゲッティングを利用してマクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスをマウスより採取した腹腔内マクロファージ細胞に実験感染して免疫応答を解析した。作出した組換えウイルスは、親株と比較してマクロファージ細胞での増殖は抑制されているが、細胞上清中へのサイトカインやケモカイン産生には有意な差は見られない事がわかった。次に実際にマウスモデルを用いて感染実験を行なった結果、マウスに致死的な病原性を示す親株と異なり組換えウイルスは明らかに病原性が減弱していることを確認した。さらに感染初期のターゲット細胞と推察される腹腔内マクロファージ細胞だけでなく、標的臓器である肝臓、脾臓などで組換えウイルス増殖が抑制されている事が確認された。またウイルス増殖の減弱にともない宿主免疫応答が抑制されていることが確認できた。これらの解析結果によりマクロファージでのウイルスの初期増殖がその後の全身臓器でのウイルス増殖や病態に重要であることが示唆されるなど重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度はマウスモデルを用いた解析を実施した。組換えウイルスは親株に比較して病原性が減弱していることを複数のマウス系統により確認した。また組換えウイルスの主要標的細胞におけるウイルス増殖が抑制され、それに伴い感染マウスにおいて多くの宿主免疫応答が抑制されていることを確認するなど、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は得られた成果をもとに研究を進展させる予定である。2017年度の海外研究施設滞在中に、作出したマクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスおよびマウスに致死的病原性を示す親株をマウスに実験感染することで、ウイルス増殖やサイトカインやインターフェロンなどの宿主応答のデータ、また病理解析を行うための臓器サンプルを得ることができた。これらのデータをもとにまずは詳細な比較検討を行い、エボラウイルス感染症の致死的症状を発症したマウス特異的に誘導されている因子を同定する。さらにはこれらの因子を制御する薬物などの探索を試みる計画である。
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Research Products
(2 results)