2017 Fiscal Year Research-status Report
レトロネーザルを応用した咽頭残留の定量評価~咽頭残留に影響する因子~(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0300
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀 一浩 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70379080)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | 嚥下 / 咽頭残留 / 嚥下障害 / 舌圧 / 咽頭圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会において,加齢や疾患に伴う嚥下障害は誤嚥や窒息を引き起こす可能性があり,大きな問題の一つとなっている.嚥下後誤嚥は,梨状窩や喉頭蓋谷など咽頭内に残留したものや口腔内に残留した食塊が喉頭内に侵入し,誤嚥に至るものである.嚥下時には,口腔内圧(舌圧)と咽頭圧との協調した圧伝搬が必要とされている.この圧伝搬の協調が失われると,咽頭残留の原因となる.しかし,これまで舌圧や咽頭圧を個別に測定した研究は数多く報告されているものの,舌圧と咽頭圧を同時に測定し,圧伝搬の詳細を検討したものはない. 我々はこれまで,オリジナルの舌圧測定用のセンサシートを開発し,嚥下時の舌圧発現様相を詳細に検討してきた.一方で,ウィスコンシン大学のProf. McCullochのグループは,ハイレゾリューションマノメトリーを用いて,詳細な咽頭圧の検討を行っている.そこで今回,ウィスコンシン大学マディソン校を訪問し,我々の開発した舌圧センサシートとハイレゾリューションマノメトリーを同時計測し,口腔から咽頭への詳細な圧伝搬の分析を行った. その結果,水嚥下時には前方部における舌圧もしくは上咽頭部の圧が最初に発現し,舌圧・中咽頭・下咽頭の圧はほぼ同じような時間に消失していた.また,舌圧持続時間は食道入口部開大時間よりも長かった.これらの傾向は,嚥下量や液体の粘度が異なっても保たれており,舌圧・咽頭圧の協調した圧伝搬を明らかにすることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,University of Wisconsinを訪問し共同研究を行った.具体的には,Department of Surgery, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health(Chairman: Prof. Timothy M McCulloch, MD, Ph.D)に2017年5月より2018年2月まで長期出張し,舌圧と咽頭圧の同期測定を行った. 舌圧は,5か所の測定点を持つ舌圧センサシートシステムを用いて計測した.また,咽頭圧は36か所の測定点を持つハイレゾリューションマノメトリーを用いて計測を行った.その結果,水嚥下時には前方部における舌圧もしくは上咽頭部の圧が最初に発現し,舌圧・中咽頭・下咽頭の圧はほぼ同じような時間に消失していた.また,舌圧持続時間は食道入口部開大時間よりも長かった.これらの傾向は,嚥下量や液体の粘度が異なっても保たれていた.一方,舌圧から下咽頭における圧伝搬は二次曲線によく近似されることがわかり,そのx切片は粘度が高いほうが大きく,圧伝搬が遅くなる傾向が認められた.さらに,努力嚥下時には,舌圧・咽頭圧ともに上昇したが,舌圧の上昇率は咽頭圧の上昇率よりも高くなった.また,舌前方保持嚥下時には後方側方部での舌圧が上昇するが,咽頭圧の上昇は認められなかった. 課題はおおむね研究計画どおりにすすんでおり,得られた結果も想定通りのものであったことから,おおむね順調に進行しているものと考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から,嚥下時における口腔から咽頭への詳細な圧伝搬を明らかにすることができた.本年度のデータは非常に膨大であり,次年度においても引き続き分析を行っていく予定である.さらに,舌圧と咽頭圧との相関関係を分析する予定としている. また,これまでの研究結果を総括し,結果報告・論文執筆を行っていく予定としている.
|