2018 Fiscal Year Research-status Report
物質の三態を制御したRn/Atジェネレータの開発とα線内用療法への展開(国際共同研究強化)
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15KK0301
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
鷲山 幸信 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80313675)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | α放射体 / ジェネレータ / アスタチン-211 / アイソトープ治療 / 放射線 / がん / 薬学 / ラドン-211 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、予定していた二度目の海外滞在を行い、1)アルゴンヌ国立研究所での滞在中に211Rnの製造実験を行った。また2)デューク大学に滞在し無極性の有機溶媒に対する硝酸溶液下での211Atの溶媒抽出挙動に関する検討を引き続き行った。さらに3)北米でα線を用いた核医学利用の研究を実施している大学ならびに研究所に訪問し、ネットワークの構築を行った。具体的には以下の通りである。 1)アルゴンヌ国立研究所では、受入担当であるJerry A. Nolen氏らとともにタンデム型加速器ATLASを用いて211Rnの製造を行った。アルゴンヌでの211Rn製造は、現地にとっても初めての試みであったため、手始めとして酸化ビスマスを密閉されたチャンバーに封入し、その中の核反応で生成した211Rnを活性炭に吸着させて外部からγ線の計測を行って、その生成量を評価した。211Rnの製造中はターゲット周囲の中性子による線量率が高くなるため、安全管理のスタッフと共に実験環境を構築しながらの実験を行った。次回以降の実験はOff-lineで行う予定である。 2)デューク大学で実施した無極性の有機溶媒に対する硝酸溶液下での211Atの溶媒抽出挙動に関する検討では、抽出後のAtの酸化状態を薄層クロマトグラフィーで評価し、少なくとも3種の化学状態の存在を認めた。帰国後も引き続き福島県立医科大学にて研究を継続している。福島県立医科大学は2018年度に211At製造条件の最適化を行い、現在1GBqの製造を定常的に達成しているため、高放射能による有機溶媒の放射線分解に関する影響を調べることが可能となった。 3)半年間の滞在中に、ワシントン大学とフレッドハッチンソンがん研究センター(シアトル)、ブルックヘブン国立研究所(アップトン)、スローンケタリングがんセンター(ニューヨーク)に訪問し互いの情報交換や意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アルゴンヌ国立研究所で実際に211Rnを用いた実験に着手したが、現時点では211Rnの製造の確認にとどまり、211Rnから壊変して生成する211Atを分離するジェネレータ装置の性能評価やその後の211Atを用いた標識検討といった応用に至っていない。高放射能の211Atの製造とその放射能が及ぼす放射線分解やRn/Atジェネレータの基礎となるAtの溶媒抽出挙動に関する研究については概ね順調に進んでいる。よって本研究の進捗状況はやや遅れていると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
アルゴンヌ国立研究所での211Rn製造実験に向けて引き続き受け入れ担当との交渉を行う。その間に、国内においても211Rnの基礎研究を日本原子力研究開発機構のタンデム加速器を用いて実施する。また高放射能の211Atを用いた溶媒抽出実験を福島県立医科大学で実施する。併せて211Rn/211Atジェネレータのプロトタイプを設計し、その機能の評価を行う。その後、高レベル放射能に対するジェネレータ本体の耐性ならびに211Atミルキングの経時的安定性を検証する。アルゴンヌ国立研究所にて高放射能のRn/Atジェネレータを作ることが出来た後には、デューク大学のZalutsky氏らのグループと211Rn/211Atジェネレータをつかった実証実験として、細胞や担がん動物を用いたアイソトープ治療の実験を行う。
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