2017 Fiscal Year Research-status Report
PI3 KおよびERKパスウエイを標的としたKRAS変異腫瘍に対する新規治療開発(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0303
|
Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
衣斐 寛倫 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 部長 (00645145)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2019
|
Keywords | KRAS / MAPK / フィードバック機構 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
ノバルティスバイオメディカル研究所においてKRAS変異腫瘍に対する治療開発を行っているグループと電話会議を行った。 その中で、①PI3KシグナルとMAPKシグナルではMAPKシグナルがより重要な創薬のターゲットと考えられること、②MAPKシグナルの抑制については、すでにノバルティス社が保有するトラメチニブがBRAF変異腫瘍に対しては認可されているが、KRAS変異腫瘍に対しては十分な効果を上げていないこと、③MAPKシグナルを標的とする際には、シグナルの恒常性を維持するために本来備わっているフィードバック機構を解析することが重要なこと、④KRAS変異腫瘍は必ずしも均一な疾患ではなく、発生母地だけでなく同一臓器由来の腫瘍でも多様性を有しており、変異KRASが果たす役割も個々の腫瘍によって異なること。このため、それぞれの腫瘍の生物学的理解が重要であること、が議論となった。 これらをもとに、現在ノバルティス社が行っている、遺伝子スクリーニングや化合物スクリーニング、患者由来ゼノグラフトモデルの解析データと、本研究者が行っている生物学的解析のデータを融合することが新たな治療法開発につながるものと考えられた。特に、①MAPKシグナルのフィードバック機構を制御する化合物の同定、②MAPKシグナルの制御が免疫チェックポイント阻害薬の効果に与える影響、について研究を進めていくこととし、共同研究計画書を作成した。作成した研究計画を実際に遂行するため、2018年3月末より米国での研究を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究先と電話、メールで議論を深めることで、KRAS変異腫瘍に対する治療開発の問題点を明確にすることが可能となった。また、本研究者がKRAS変異腫瘍において治療の標的と考えていた分子と、先方が標的薬を開発している分子に多くの共通点が見つかり、国際的な研究の動向を知るとともに、治療効果の証明に関しても有用な手掛かりを得た。 今後の研究を進めるうえでは、本研究者が持つ生化学的解析手法の強みと、ノバルティスバイオメディカル研究所が有する種々のスクリーニングシステムを組み合わせることが有効であることも明らかとなった。またノバルティス社は、KRAS変異腫瘍患者より樹立した多数の患者由来ゼノグラフトモデル(PDXモデル)を有しており、一部はMAPKシグナル阻害薬に対する有効性の検討や、その効果予測因子の解析が行われている。その解析にもかかわることで新たな標的を探索することも可能になると思われた。また、近年KRAS変異腫瘍に対しても急速に導入が進む免疫療法についても、MAPKシグナルの制御と免疫療法の効果増強について共同研究を行うことが決定した。 このように本年度は、国際共同研究を行う基盤が確立できた。申請者、共同研究者ともに課題の期間途中に異動したため共同研究契約の締結に若干の時間を要したが、年度末より実際に米国での研究活動が開始され、研究所内の多くのKRAS研究者とも交流が開始されたことから、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、計画の最終年度であり、7か月間の米国滞在を予定してる。滞在期間中にノバルティスバイオメディカル研究所が有する薬物スクリーニングのデータなどを十分理解し、簡単な解析であれば自ら行うことが可能になることが目標である。また、研究所内には多数の専門家が所属しており、特に薬物スクリーニングチーム、バイオインフォマティクスチーム、トランスレーショナルリサーチチーム、マウスチームとは定期的にミーティングを行い、今後も共同研究が可能となるよう交流を深める予定である。MAPKシグナルのフィードバック機構を制御する化合物の同定については効果が証明されつつあり、次年度中の論文投稿を予定している。MAPKシグナルの制御が免疫チェックポイント阻害薬の効果に与える影響については、初期の解析が終了し、効果増強のメカニズムについて論文投稿を予定している。また、PI3K、ERKシグナルの制御と免疫療法の効果増強に関する新たなスクリーニングシステムについても滞在中に立ち上げを行い、日本で研究を継続する予定である。
|
Research Products
(6 results)