2018 Fiscal Year Research-status Report
PI3 KおよびERKパスウエイを標的としたKRAS変異腫瘍に対する新規治療開発(国際共同研究強化)
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15KK0303
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
衣斐 寛倫 愛知県がんセンター(研究所), がん標的治療TR分野, 分野長 (00645145)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | KRAS / MEK / SHP2 / 受容体 / BRAF |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年4月から10月末までノバルティスバイオメディカル研究所に滞在し共同研究を遂行した。ERKシグナルを標的とするMEK阻害薬を投与すると受容体の活性化が誘導され、その結果ERKシグナルが再活性化されることから、受容体からERKシグナルに至る経路を遮断することを試みた。化合物・発現抑制スクリーニングなどを用いた結果から、アダプタータンパクであるSHP2を標的とすることでMEK阻害薬投与後のERKシグナルの再活性化が抑制されることを見出した。このため、ノバルティスが開発したSHP2阻害薬SHP099とMEK阻害薬の併用療法について、細胞株、ゼノグラフトモデル、患者由来ゼノグラフトモデルを用いて評価を行い、その有効性を示した。また、PI3KシグナルについてもSHP2阻害薬を併用することにより活性化抑制されていた。しかしながら、同様の報告が2018年5月から7月にかけてNature Medicine誌をはじめとして計4本報告されたことから、現在はSHP2阻害薬がMAPKシグナルの再活性化を抑制するメカニズムについて解析を行っている。また、KRAS変異腫瘍に対する免疫療法の有効性については、ノバルティス社が持つスクリーニングの結果から、免疫療法の効果を減弱する候補因子を抽出し、現在解析を行っている。一方、KRAS腫瘍の研究を行っている研究者と交流を行うことにより、ERKパスウエイの制御について、KRASの下流に位置するBRAF変異腫瘍をモデルに検討する国際共同研究を開始した。BRAFのホットスポット以外に変異を有する大腸がんが、受容体の影響を受けるかどうかについて日米5000例を超える大腸がん症例を用いて検討を行い、Class 3と呼ばれるBRAF変異を有する大腸がんでは抗EGFR抗体が有効である可能性を示し、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
KRAS変異腫瘍に対するSHP2阻害薬とMEK阻害薬の有効性について実証したが、他グループに先んじられてしまった。このため、SHP2がERKシグナルを活性化するメカニズムについて詳細な解析を追加する必要が生じ、論文の投稿が遅れている。 KRAS変異腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強・減弱する因子の同定については、ノバルティス社が持つスクリーニングシステムを活用することで、標的の候補が複数認められている。この中にはPI3Kシグナル、ERKシグナルにより活性が制御されるものが含まれており、本基課題と合わせた検討が可能になってきている。 BRAF遺伝子にホットスポットであるV600以外の変異(non-V600変異)を有する腫瘍の解析については、KRAS研究者と交流することで新たに生まれた共同研究である。受容体とERKシグナルの関係を解析することでKRAS変異腫瘍に対する新規治療開発にもつながる研究である。こちらについては、BRAF non-V600変異大腸がんに対する抗EGFR抗体の有効性について、変異の種類がClass 3であれば抗EGFR抗体が有効である可能性を初めて示すなど、想定以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
SHP2の機能解析に時間を要することおよびKRAS変異腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果増強・減弱因子について解析を追加する必要があることから、研究計画の一年延長を申請した。 SHP2の機能解析については、ERKシグナルを抑制後に活性化する受容体が上皮系の性質を持つKRAS変異腫瘍ではERBB3、間葉系の性質を持つKRAS変異腫瘍ではFGFR1であることを基課題の研究成果として示していることから、SHP2とERBB3およびFGFR1の関係性について明らかにし、論文投稿を行う。 免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強・減弱する因子については、ヒトおよびマウス由来KRAS変異細胞株を用いた検討とマウス同種移植モデルを用いた検討をノバルティスバイオメディカル研究所と共同で行う予定である。 BRAF non-V600変異腫瘍において受容体がERKシグナルに与える影響の解析については、non-V600変異のうちClass 3変異であれば抗EGFR抗体が有効である結果が既に得られており、2019年度中の論文化を目標とする。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] ADAM17 selectively activates the IL‐6 trans‐signaling/ERK MAPK axis in KRAS‐addicted lung cancer2019
Author(s)
Saad MI, Alhayyani S, McLeod L, Liang Yu L, Alanazi M, Deswaerte V, Tang K, Jarde T, Smith JA, Prodanovic Z, Tate MD, Balic JJ, Watkins DM, Cain JE, Bozinovski S, Algar E, Kohmoto T, Ebi H, Ferlin W, Garbers C, Ruwanpura S, Sagi I, Rose-John S, Jenkins BJ
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Journal Title
EMBO Molecular Medicine
Volume: 11
Pages: e9976~e9976
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Increased Synthesis of MCL-1 Protein Underlies Initial Survival of EGFR-Mutant Lung Cancer to EGFR Inhibitors and Provides a Novel Drug Target2018
Author(s)
Song KA, Hosono Y, Turner C, Jacob S, Lochmann TL, Murakami Y, Patel NU, Ham J, Hu B, Powell KM, Coon CM, Windle B, Oya Y, Koblinski JE, Harada H, Leverson JD, Souers AJ, Hata AN, Boikos SA, Yatabe Y, Ebi H, Faber AC
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Journal Title
Clinical Cancer Research
Volume: 24
Pages: 5658~5672
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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