2017 Fiscal Year Research-status Report
発達期バレル皮質の神経回路形成におけるカンナビノイド依存性シナプス可塑性の役割(国際共同研究強化)
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15KK0318
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伊丹 千晶 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90392430)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | カンナビノイド / 大脳皮質 / 臨界期 / スパイクタイミング依存性可塑性(STDP) / 体性感覚野 / バレル皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、発達期の視床皮質投射経路(VB→L4)、および大脳皮質4層から2/3層経路(L4→L2/3)における可塑的変化を電気生理学的手法により明らかにしてきた。カンナビノイドは、VB→L4, L4→L2/3におけるスパイクタイミング可塑性ー長期抑圧(STDP-LTD)に関与し、さらにカラム構造の形成に重要な影響があることが示された。以前より、内因性カンナビノイドには、アナンダマイド(AEA)と2アラキドノイルグリセロール(2-AG)が候補としてあげられ、いずれなのかという、大変根本的な問題点が未だに判明していなかった。よって我々は、東京大学医学部との共同研究を行い、2-AGの合成酵素を遺伝的に欠損したDGLα欠損マウスを用いて、VB→L4, L4→L2/3における発達期可塑性における内因性カンナビノイドの役割を決定することを試みた。DGLα欠損マウスでは、VB→L4, L4→L2/3のSTDP-LTDが欠損し、カラム構造が正常に形成されていなかった。今回の国際共同基金では、渡航先のインディアナ大学Hui-Chen Lu博士、さらにカンナビノイド研究の第1人者であるKen Mackie博士の協力を得て、日本では入手の難しいΔ9-THCを、生後2週目マウスに対して腹腔投与し、形態的異常が示されるかどうかを確認し、DGLα欠損マウスにおける効果と比較検討した。その結果Δ9ーTHC、WIN(カンナビノイド受容体作動薬)投与群では、4層細胞の軸索全長、及び2/3層内に侵入している軸索の長さが優位に減少していた。このことから、4層細胞の軸索終末に発現しているカンナビノイド受容体は、4層細胞の軸索形成をコントロールしている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、予備的な実験として、内因性カンナビノイド、2アラキドノイルグリセロールの合成酵素、ジアシルグリセロールリパーゼアルファを遺伝的に欠損した動物(DGL-alphaーKO)を用いて、4層有棘星状細胞の軸索の投射を検討してきた。その結果、4層から2/3層へのコラム状投射に異常が見られる傾向、タイミング依存性可塑性(STDP-LTD)の消失がみられた。これより、カンナビノイド存在下では、タイミング依存性可塑性(STDP-LTD)を介して、4層有棘星状細胞の軸索の退縮が起こる可能性が考えられた。この可能性を検討する目的で、インディアナ大学のHui-Chen Lu博士と、THC投与の実験を行った。また、インディアナ大学にはカンナビノイド研究の第1人者である、Ken Mackie博士にも実験のアドバイスをいただき、効率的に実験を行い、予定通りに実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、インディアナ大学で行った実験のデータ整理を行い、L4細胞の軸索投射への作用を検討し、さらに定量的に解析する。また、CB1Rのシグナル伝達の下流を探索する目的で、Gタンパク質である、G12/13に着目し、そのインヒビタ-等の作用を検討する。
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