2016 Fiscal Year Research-status Report
転写因子Bach2による造血幹細胞の分化運命制御(国際共同研究強化)
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15KK0328
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 亜里 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90749772)
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Project Period (FY) |
2015 – 2017
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Keywords | 形質細胞 / 免疫記憶 / 細胞長期生存 / 単一細胞遺伝子解析 / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
ワクチンのメカニズムである免疫記憶の柱の一つは、抗体を産生する形質細胞やメモリーB細胞が長期にわたって生体内で生存することにある。形質細胞の長期生存機構を解明するため、長期生存形質細胞が存在する骨髄と、主に短期生存形質細胞で構成される脾臓の形質細胞を分取し、DNA マイクロアレイと微小流路系を用いた単一細胞定量PCR で80遺伝子発現の解析を行った。その結果、長期生存形質細胞高発現遺伝子としてSlpi (セリンプロテアーゼ阻害因子)遺伝子、転写因子、細胞膜タンパク質をコードする遺伝子など、複数の遺伝子を抽出した。渡航先はメモリーB細胞が専門で、申請者は半年の渡航期間中、10種類の細胞表面タンパク質を標識したフローサイトメトリー法による抗原非特異的なメモリーB細胞の同定方法を習得した。また、従来の単一細胞RNA-Seqの問題点であった、転写量が少なく、検出が難しい転写因子の遺伝子の検出感度を高めるため、同研究室では、2016年に発表されたCEL-Seq2という増幅方法を採用して、メモリーB細胞の単一細胞RNA-Seqに取り組んでいたが、私の渡航中に実験系が立ち上がらなかった。そこで、帰国後、独自に形質細胞の単一細胞RNA-Seqを行うため、CEL-Seq2を立ち上げた。品質確認の結果、RNA-Seqのライブラリの作製は順調に行うことが出来たため、サンプルが揃い次第、解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航先で、抗原非特異的なメモリーB細胞の検出方法を習得することが出来た。また、PIや、ラボメンバーとの日々の討論を通じて、メモリーB細胞や、形質細胞についての理解を深めることが出来た。さらに、最終目標であった、単一細胞RNA-seqも順調に進んでおり、研究期間内に解析が終了すると予測されることから、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄と脾臓の形質細胞の単一細胞RNA-Seqを行い、長寿命と単寿命の形質細胞の遺伝子発現様式を比較する。現在までに、CEL-Seq2を用いた単一細胞RNA-Seqのライブラリ作製には成功しており、サンプルを揃えて、解析を行う。その結果、遺伝子発現様式に応じて形質細胞を亜集団に分類し、その機能や生存能などを探るのが目的である。また、ライブラリ調整途中のサンプルを使用して、B細胞受容体のレパトア解析を1細胞で行う方法を開発中である。これにより、単一細胞RNA-Seqと単1細胞レパトア解析を同時に行う系を確立し、免疫記憶機構の更なる解明に迫る。
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