2017 Fiscal Year Research-status Report
炎症性肺疾患に対する温度応答DDSの基盤技術に関する研究(国際共同研究強化)
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15KK0352
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田上 辰秋 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (10609887)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 吸入剤 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、リポソーム吸入剤の個別化医療を行っていく上で重要となる、高齢者の吸入剤に関する体内動態について焦点をあてて調査を行った。呼吸器疾患の多くは、時間をかけて高齢になって発症するものが多く、高齢者に吸入剤を投与することが多い。近年、PM2.5などの大気汚染が人口が増加する地域で深刻になっていることから、重篤な肺疾患が懸念されており、吸入剤の市場拡大も想定されている。高齢者は、生理機能の低下(呼吸機能の低下、肝臓・腎臓機能の低下など)、併存疾患、多剤服用による薬物相互作用など様々な要因が体内動態に影響を与えることから、薬物動態を予測することが困難にさせている。調査の結果、吸入剤の体内動態のデータは(日本だと添付文書やインタビューフォームが相当する)、健常な若者を対象に行った結果であるものがほとんどであるため、高齢者の体内動態に関する情報はほとんど知られていないことが明らかとなった。次に、調査を進めて各疾患に対する高齢者の情報について体系的に習得することを試みた。調査の結果、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、パーキンソン病などの疾患は、高齢になってから発症するため、一部の臨床試験により、年齢差における比較が行われていることが明らかとなった。一部の研究では、高齢者では吸入剤投与後のAUCが高くなっており、この原因としては、肺からのクリアランスや肝臓・腎臓機能が影響している可能性が示唆された。その一方で、比較的健常な高齢者においては、年齢における体内動態の差は少ないと考えられる。 また、国際共同研究者と打ち合わせを行い、特殊な薬物放出を行うことのできるリポソーム吸入剤や、薬物をリポソーム内に封入するための方法についてディスカッションを行い、複数の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に予定したリポソーム吸入剤に関する開発をある程度実行することができた。さらに調査を行い、高齢者に対する吸入剤に関して有用な情報を得られることができたため、概ね順調に進展していると考えた。リポソーム吸入剤に関する有意義なディスカッションを行うことができた。したがって、海外渡航をすることに大きな意義があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、海外に渡航した経験をもとに吸入用のリポソーム製剤を調製し、検討する予定である。実際には、リポソーム吸入剤に適した医薬品添加剤を用いて吸入剤として安定なリポソームを作製するだけでなく、薬物の封入効率も高めることができるような、機能性リポソーム吸入剤のモデル研究を行う。
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