2016 Fiscal Year Research-status Report
「老いの文化」の形成と機能に関する比較に基づく人類学的研究
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15KT0008
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
内堀 基光 放送大学, 教養学部, 教授 (30126726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美知夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30322647)
加賀谷 真梨 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50432042)
広瀬 洋子 放送大学, 教養学部, 教授 (80208884)
小谷 真吾 千葉大学, 文学部, 教授 (90375600)
高橋 絵里香 千葉大学, 文学部, 准教授 (90706912)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢社会 / 老人文化 / 生涯 / 異世代間インタラクション / ジェロントロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
理論活動として、老齢問題を研究する国内の研究者(コメンテータを含み6名)を招聘し、3回の研究集会を開催した。第1回は沖縄の高齢者生活およびケア、第2回は日本における自然葬運動と年齢との関連、第3回はアフリカにおける老人の相対的に高い社会的位置づけに関するものである。各回とも本研究分担者のほか大学院生等の参加を得て、社会間比較に関して有益な議論を展開しえた。 研究代表者と研究分担者による海外と国内における現地調査は、(1)マレーシアとオーストラリアにおいてイバン社会における老人ケアの変化および日本人高齢者のリタイアド・ライフ調査を通じて比較の視点を追究(内堀)、(2)タンザニア・マハレ国立公園内のチンパンジー社会においてデモグラフィーの把握のため個体情報のアップデートと、老齢個体を含む数個体の個体追跡(中村)、(3)沖縄・波照間島において、高齢者ケア施設が小規模多機能型施設に移行したことによるケアの内容及び地域での活動内容の変容を追い介護保険法が沖縄の離島社会に及ぼす影響に関する知見を得(加賀谷)、(4)フィンランドのパルガス町で、公的なケアサービスを利用していない高齢者に対するインタビューから、インフォーマルケアの実態を把握し、行政の在宅介護サービスの組織改革についての参与観察と、医師の往診に同行し、辺境医療・介護の実態を調査することにより新自由主義的なイデオロギーが浸透していく様子を観察した(高橋)。また小谷はマレーシア・オランアスリに対するフィールド調査準備を進めた。 研究成果は、研究分担者によるいくつかの学会発表のほか、ホームページの運用による広報 (http://www.anth.l.chiba-u.ac.jp/gerontology/)を通じてなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度の採択決定が7月になったため、研究分担者の多くがすでに別件の研究計画を立てており、初年度の計画にかなりの誤算が生じた。このことが研究2年度まで影響をおよぼしている。また研究分担者のうち2名がそれぞれの家族成員の生涯に関わる事由によって、第2年度に予定した研究活動を遂行することが不可能あるいは困難になった。高齢者に関わる文化を研究する計画としては、やむをえない事由であるので、これに対する補完は次年度以降にせざるをえない。チンパンジー社会、マレーシアおよびオーストラリア、またフィンランドにおける高齢者(日本人を含む)の生活実態の現地調査に関しては予定どおりに進捗している。研究代表者によるマダガスカル社会での調査、小谷によるオランアスリー社会調査は、スケジュールの関係で2016年度中には行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に述べたとおり、遅れている研究計画を補完することは2017年度に行わざるをえない。既定の計画では2017年度が3年計画の最終年度に当るが、補完を単年度ですべて行うことは難しく、研究計画の1年延長(全4年)で対応したいと考えている。本研究は「ネオ・ジェロントロジー」特設分野の計画であり、当特設分野の実施期間が2018年度までであることを十分理解しており、2018年度中には、計画されてはいたが未実施のアメリカ社会およびマダガスカル、オランアスリー社会での現地調査を含めて十分に目的を達成することとしている。
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Causes of Carryover |
研究初年度の採択決定が7月になったため、研究分担者の多くがすでに別件の研究計画を立てており、初年度の計画にかなりの誤算が生じたことが研究2年度まで影響をおよぼしている。2016年度はまた研究分担者のうち2名がそれぞれの家族成員の生涯に関わる事由によって、年度に予定した研究活動を遂行することが困難になった。やむをえない事由であるので、これに対する補完は次年度以降にせざるをえない。研究代表者によるマダガスカル社会での調査、小谷によるオランアスリー社会調査は、本務校等業務の関連で2016年度中には行えなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者による海外での現地調査はマレーシアのほか、中国、マダガスカル、およびオーストラリアを予定しており、このために2016年度から繰り越した額の相当部分を使用することになる。小谷によるオランアスリー調査も本格的に行うことになるため、これへの支出も大きい。また当初3年計画ではじめた課題であるが、1年の延長を考えており、実際には2年度にわたって使用することになる。
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Research Products
(10 results)