2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代高速鉄道のためのトンネル圧縮波変形メカニズムの数理科学的研究
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15KT0014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴之 京都大学, 理学研究科, 教授 (10303603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大縄 将史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10443243)
岡本 久 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40143359) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 応用数学 / 流体工学 / 交通工学・国土計画 / 関数方程式論 / 関数論 |
Outline of Annual Research Achievements |
トンネル微気圧波の形成・発展メカニズムの解明に向けた数値的研究とデータ解析的研究を鉄道総研との協働により推進した.特に今年度,ほぼ毎月一回のペースで鉄道総研との定期的な研究検討会を行い,より密度の高い数理連携探索の推進に成功した.その結果,微気圧波予測の実用に耐えうる有望な数値計算法や解析法などを見いだすことができた.1.小澤方程式に含まれる-1/2階微分に対応する特異積分作用素の高精度数値計算について,昨年度までに提案された手法は鉄道総研の従来手法で得られる結果に比べて,圧縮波の不連続面の位置や,応用上重要な量である圧力時間微分の最大値の変動において違いが見られた.そこで,小澤方程式の持つ移流項と特異積分による散逸項の二つの非線型項を分離して二つの非線型方程式とし,移流項部分は特性曲線にそった解析解を使い,散逸項部分は圧縮波を区分的に一次関数近似を行うことによって得られる解析解を利用して交互に空間積分を行うことで数値解を構成するSplitting法を提案し,鉄道総研でこれを実装し従来の手法と遜色ない成果が得られることを見いだした.新しい解法は今後の小澤方程式の数値解析における代替手法として利用できる可能性が高い.また,この新しい数値解法は数学的構造が明確であるため,この解法を用いた圧縮波形成メカニズムの理論研究の基盤となるものである.2.圧縮波のデータ解析的研究では,1の手法との組み合わせによるUQ(不確実性定量化)の研究へと進んだ.特に,generalized Polynomial Chaosと上記Splitting法を用いた小澤方程式の解析手法の研究に着手し,現在予備的な成果が得られつつある.また,近年活発になっている時系列解析やデータサイエンス研究の成果を微気圧波の現地データへの適用を進めるべく国際研究集会での発表や関連する研究者との情報交換を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小澤方程式の数値的研究における最大の課題であった特異積分の数値的取り扱いにおいて,微気圧波予測の実用に耐えうるSplitting法に基づく数値計算法へと到達したことは,本研究における大きな成果である.今後はこの方程式の理論的研究をこの数値解法に基づいて数学にも安心できる精度保証を持った数値的研究を進めることが可能になっている.この数値解法による小沢方程式の数値解析とデータサイエンスの研究手法の一つである不確実性定量化の数理的手法の併用により,圧縮波切り立ちに関する予測が定量的に行えるようになってきた.これは,今後の微気圧波研究に新しい展開をもたらすものと考えている. 連携探索を目的とした本特設分野の趣旨に照らして,鉄道総研との定期的なミーティングを行うことによって,研究進捗状況の確認,問題意識の共有,さらに成果の検討などがリアルタイムで進んだことも重要である.鉄道総研からのフィードバックを随時得ながら,数理的手法の開発が進んでおり,常に応用可能性を意識した方向へ進めたことがこうした研究成果を得る上で非常に有益であった.この成果を受けて,本研究費での支援終了後も,継続して鉄道総研との共同研究が計画されており,本格的な数理・企業研究が継続することになったことは,特設分野(連携探索)の成果として順調に進展した証であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究研究計画は当初,平成30年度で終了予定であったが,同年度に発生した台風21号や大阪北部地震などの突発的な自然災害のため,一部予算を予定通り執行できず,平成31年度に繰り越しせざるをえなくなった.しかしながら,平成30年度の成果として,小澤方程式の新しい数値解法であるSplitting法が得られ,これを基盤にした新しい不確実性定量化による微気圧波研究の方向性も見いだされた.また,これらの学術的成果を受けて,関係する研究集会での研究発表や鉄道総研との研究打ち合わせなどを継続的に行う必要も生じている.そのため,繰り越された研究費は関連する研究集会への参加経費として,また,鉄道総研との継続的な議論のための打ち合わせの経費として有効に利用する予定である.なお,研究成果の概要にあるように,鉄道総研と夏頃を目処にして共同研究契約を締結する方向で準備が進んでおり,その締結までの必要な研究資金としても大切に利用したいと考えている.本共同研究では,企業との共同研究であるという性質上,本研究に関連する基礎研究の成果が学術論文として公表された以外は,鉄道総研との共同研究報告書などの内部資料としてまとめられており外部への公開は少ないが,最終年度において,Splitting法とUQおよびデータサイエンス研究との融合を進めることで,微気圧波の形成・発展に関する当該分野の学術的に新しい研究成果として公表することを目指す.
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Causes of Carryover |
2018年度の大阪北部地震の影響および9月に関西に上陸した台風21号の影響で関西空港が利用不可になったことなどをうけ,予定していた海外での研究集会での成果発表が中止になり,予算執行ができなくなった.これを翌年度に繰り越し申請を行い,これまでに得られた成果をさらに発展・加速させるための研究経費として利用し,鉄道総研との共同研究契約締結までの資金として有効に活用する.また,関連する研究集会であるFields Institute(カナダ)の国際研究集会,国際応用数学者会議ICIAM2019(スペイン)および第65回理論応用力学講演会(札幌市)などに出張して講演を行うことで中止になった成果発表を行う予定である.
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Research Products
(3 results)