2015 Fiscal Year Research-status Report
発生におけるマルチスケールの自発的パターン形成現象の数理の解明
| Project/Area Number |
15KT0018
|
|---|
| Research Institution | Kyushu University |
|---|
Principal Investigator |
三浦 岳 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10324617)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
|
| Keywords | パターン形成 / スケーリング / フラクタル |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
発生現象によって起こる様々なパターン形成現象の中には、単一の空間スケールには収まらないような現象が存在する。たとえば、頭蓋骨の縫合線、網膜の血管網や肺の枝分かれ構造はフラクタル構造であると言わており、様々な空間スケールでパターンが生じている。このようなスケーリング則の生じる原因の解明が本プロジェクトの目的である。
まず、縫合線のパターン生成メカニズムとスケーリング則の関係を検討した。縫合線に関しては、特定の特徴長さを持つ構造ではなくフラクタル構造をなぜ形成するのかに関して (1) 系へのノイズの付加 (2) 異常拡散とのカップリング
の２つの可能性に関して数値計算を行い、それぞれの数値計算パターンでスケーリング則が成立することを確認した。今後、北海道大学の栄伸一郎教授と数理解析を行い、なぜパターンにこのような特徴が生じるのか、そのメカニズムを解明する。
また、名古屋市立大学眼科の植村明嘉教授み提供してもらった網膜血管発生の時系列データを解析したところ、網膜血管網の発生段階で血流によるリモデリングが生じ、結果として血管の太さと長さを両対数グラフでプロットすると直線に乗ることがわかった。この現象に関して、血流による管腔径の成長方程式および血管網システムの機能最適化から導出されるMurray則の双方からスケーリング則を導出した。さらに、画像解析から血管によって囲まれる島の領域の数と大きさにも同様のスケーリング則がなりたつことを発見した。これに関しては、動脈周辺で血管網の一部がランダムに消失するという仮定で数理モデルを立て、観測されているような島のサイズー個数分布が成り立つことを示した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績に関して今年度５月末に発生性生物学会で発表する予定だったが、震災の影響で学会が中止になってしまい発表の機会が失われた。今後、数理生物学会で順次発表する予定である。
|
| Strategy for Future Research Activity |
現在当研究は、数多くの医学部の学部学生と共同研究することで成り立っている。2013年に九州大学に赴任して以来、研究に興味を持つ多くの医学部の学部生を個人的に教育し、生命現象の数理モデル化と数理解析、数値経産が行えるように鍛え上げてきた。彼らの能力とマンパワーをうまく活用することで、さらに研究の進度を早める。
|
| Causes of Carryover |
今年度からテクニカルスタッフを雇用する予定だったが、機械のセットアップ等で雇用できなかったため次年度に回した。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成２８年度から事務補佐員を雇用し、人件費に当てる。
|
