2016 Fiscal Year Research-status Report
発生におけるマルチスケールの自発的パターン形成現象の数理の解明
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15KT0018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三浦 岳 九州大学, 医学研究院, 教授 (10324617)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | パターン形成 / スケーリング / 頭蓋骨縫合線 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋骨の縫合線のパターン形成について、確率偏微分方程式を用いた数理モデル化を行い、スケーリングの生じるメカニズムを明らかにした。通常の偏微分方程式系では、特定の特徴長さを持つパターンが成長するのみで、空間構造のスケーリングは生じない。しかし、実際に標本で観察される湾曲構造は非整数のフラクタル次元を持つ。このメカニズムを明らかにするために、ノイズ項を含む偏微分方程式系の挙動を解析した。
まず、偏微分方程式のパターン形成で用いられる各周波数成分のスペクトル分布が、フラクタル構造ではどのような特徴を持つのか確認し、周波数kの成分の振幅が k^b のべきの形になる必要があることを明らかにした。次に、フラクタル構造を生成する最も簡単な確率偏微分方程式であるEdwards-Wilkinson方程式に関して、定常状態での周波数成分の標本平均が k^b のべきになることを明らかにした。さらに、線形安定性解析をして得られるパターン形成のカーネルを用いると、任意のパターン形成を引き起こす偏微分方程式系に関してフラクタル構造を起こす条件を調べられることがわかった。
現在、このモデルを実際のパターンに応用するため、縫合線の湾曲構造の計測を行っている。また、このモデルをMDCK細胞という腎臓尿細管上皮の細胞接着装置の湾曲構造形成にも応用できることがわかったため、生理学研究所の古瀬幹夫教授と共同でこのテーマに関しても実験的検証をセットアップした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
頭蓋骨の縫合線のパターン形成に関しては、偏微分方程式系によるパターン形成と、フラクタル木科学で用いられるスケーリングの概念を上手く繋ぐことができて、基本的な系の定式化はほぼ完了した。以後、頭蓋骨の縫合線のうちでもフラクタル性が強いラムダ縫合の計測を行い、この系の実験的な検証を行う。また、他のスケーリング側を生じる構造についても、数理モデリングと実験的検証を組み合わせてメカニズムの解明を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた縫合線のパターン形成に関しては、九州大学医学部解剖学教室で所蔵する頭蓋骨標本を計測することで実験的検証を遂行する。また、このモデルをMDCK細胞という培養細胞株の細胞壁の湾曲構造形成のモデルに適用できることがわかってきたため、この応用も並行して行う。 さらに、スケーリング側を示す現象として、血管ネットワークの血管径と頻度という問題も新たに扱っている。これに関しても支配方程式から分布パターンがどのように生じるのか、仮説となるモデルを定式化できたので、以後これを実験的に検証していく。
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Causes of Carryover |
今年度、ドライ系の数理モデリングー数理解析の部分の割合が予想以上に大きくなったため、消耗品費が予想よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度作成した理論モデルは、来年度実験的検証が必要なので消耗品費で今年度残額分を使用する予定である。
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