2015 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な養殖漁業を支える森から海への有機物と微量必須金属の輸送メカニズム
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15KT0022
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡部 徹 山形大学, 農学部, 教授 (10302192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 学 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30598503)
伊藤 紘晃 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (80637182)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 有機物 / 森林 / 土壌 / 鉄 / 河川 / 農耕地 / 生物利用性 |
Outline of Annual Research Achievements |
宮城県志津川湾流域を対象に,流域土壌からの有機鉄の溶出と下流域への供給を調べる目的で,同流域の森林や農耕地において土壌試料を採取し,湾内ならびに八幡川を含む主要3河川において水試料を採取した。 土壌試料については,人工雨水による鉄と有機物の溶出実験を行った後,溶出液に対して溶存鉄濃度と溶存有機炭素の測定,分光吸光光度分析,分光蛍光光度分析,鉄の酸化速度分析を行った。その結果,針葉樹土壌からは比較的高濃度で溶存鉄(DFe)と溶存炭素(DOC)が溶出した。森林土壌を細かく見ると,ほとんどの地点で浅い層のDOC濃度が深い土壌よりも高く,表層土壌が河川への有機物供給に大きく貢献することが分かった。一方で,Fe/DOC比(溶出した単位DOC当たりの鉄の量)は,腐植物質等の有機物量と有機物に錯形成している鉄量の比率をあらわすが,森林土壌においてこの比率は下層で高く,母材から鉄が供給されていることが示唆された。吸光度ならびに蛍光度分析からは,鉄の錯形成にかかわる酸性官能基に富む有機物が針葉樹林や農耕地から多く溶出することが分かった。また,土壌の炭素・窒素含有量(C/N比)分析を行った結果,このFe/DOC比は土壌のC/N比と負の相関を示した。有機物分解が進んだ土壌ほどC/N比が低いことから,有機物の分解程度が鉄との錯形成に影響を及ぼすことが示唆された。 水試料の分析では,河川水中の溶存鉄濃度が,浄化槽排水や田面水などを含む人為起源から得られた水試料より低い値を示した。この結果は,森林土壌のみならず,人為起源からの鉄供給により,河川ならびに下流で溶存態鉄濃度が上昇している可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していた研究内容はおおむね終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,おおむね計画通りの研究を行う予定である。ただし,平成27年度の結果から,森から海への有機物と鉄の輸送メカニズムを考えるには,その起源だけでなく,流下過程での変化にも注意を払う必要性を感じた。すなわち,海水と混合した際の塩濃度やpHの上昇による有機物の性質の変化である。この観点からの分析を,次年度以降の研究計画に加えていきたい。
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Research Products
(7 results)