2016 Fiscal Year Research-status Report
分光分析と3次元輸送シミュレータを併用した青果物循環改善
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15KT0026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 義雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70376565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 宣貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (50353975)
平井 優美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (90415274)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 農業工学 / 解析・評価 / モデル化 / 園芸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
青果物ロスは、収穫後における鮮度や品質の低下に起因することから、それらを客観的に評価するための手法を最初に検討しておく必要がある。これまで、ブロッコリーを試料として、商品性に多大な影響を及ぼす外観品質を非破壊かつ迅速に評価する方法について研究を進めてきた。その結果、デジタルカメラで撮影したRGB画像をMATLABで普遍性のある値であるL*a*b*値に変換することが可能であることを明らかにした。 今年度は、デジタルカメラ画像から鮮度を判定する方法について研究を行った。その結果、様々な指標の中から、-a*/b*を鮮度の指標として選択した。a*は-緑~+赤、b*は-青~+黄の色変化を表すことから、ブロッコリーの鮮度が低下し、黄化が進行するほど、-a*/b*は低下する。なお、鮮度低下を示す閾値は、0.94であることが明らかになった。なお、過去には色相角(arctan(b*/a*))でブロッコリーの黄化程度を評価した研究も報告されてきたが、-a*/b*の方が微小な違いまで判別することができ、有用であることが明らかになった。 3次元輸送シミュレータにブロッコリーを封入した容器を設置して輸送実験を行い、無振動区と比較した。その結果、振動を与えた実験区では18Hz近傍をピークとして、5Hz~25Hzの幅広い周波数域でPower Spectrum Densityが高い値を示し、呼吸速度が25%増加した。呼吸速度が速いほど鮮度低下が早まることが知られており、輸送中の品質管理が重要であることが示唆された。さらに、ブロッコリーを袋で密封し、低O2、高CO2環境で貯蔵したところ、大気貯蔵に比べてL-アスコルビン酸(壊血病予防効果)とスルフォラファン(胃癌予防効果)が有意に高い濃度となった。以上の結果から、輸送と同時に気体環境を調節し、品質低下を抑制できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はブロッコリーを試料としてデジタルカメラによる外観品質の迅速非破壊評価法に関する研究を進め、色空間値と鮮度の関係を明らかにするとともに、鮮度が保持されていることを示す閾値まで提案することができた。青果物の貯蔵実験において、品質評価は最も重要な項目の一つであり、有効な評価法が明らかになったことは、研究は進展したと考えられ、おおむね順調に進展していると考えられる。 さらに、輸送包装に関する研究を開始し、輸送中の振動や、包装袋内気体組成が品質に及ぼす影響を明らかにすることができた。この内容についても、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
貯蔵実験に必要な品質評価法として、簡便かつ迅速な方法と輸送包装が野菜の品質に及ぼす影響が明らかになった。今後は今年度明らかになった新知見を有効に活用し、貯蔵実験を行う。具体的には、3次元輸送シミュレータにて青果物を貯蔵し、外観品質を目的変数とする鮮度低下速度予測モデルの構築をさらに進める。外観品質に加えて、機能性物質濃度等の内部品質についても併せて評価する。
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Causes of Carryover |
3次元輸送シミュレータが一時故障し、実験ができなかった時期が発生したため、物品購入費の支出額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在は3次元輸送シミュレータの修繕が終わり、実験が可能な状況である。昨年度取得したデータの再現性を確認するための再実験の繰り返し数を増やし、データの信頼性を向上させるため、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金を合算した費用を執行して研究を進める。
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