2017 Fiscal Year Research-status Report
分光分析と3次元輸送シミュレータを併用した青果物循環改善
Project/Area Number |
15KT0026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 義雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70376565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 宣貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (50353975)
平井 優美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (90415274)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 農業工学 / 解析・評価 / モデル化 / 園芸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、画像解析による色空間値に基づく外観品質の客観的評価法を確立し、3次元輸送シミュレータに設置したブロッコリーの外観品質の経時変化の評価に有効であることを確認した。今年度は、内部品質の評価法についてブロッコリーを試料として検討することとした。 ブロッコリーを気体遮断袋中に密封し、20℃、低O2、高CO2環境で貯蔵したところ、大気貯蔵に比べてL-アスコルビン酸(壊血病予防効果)が有意に高い濃度となった。L-アスコルビン酸については、過去の研究例で、鮮度低下とともに減少することが報告されていることから、低O2、高CO2環境での貯蔵によりブロッコリーの呼吸が抑制され、鮮度が保持されたことが確認された。 さらに、スルフォラファン(胃癌予防効果)濃度も、気体遮断袋包装により増強された。過去には加熱、マイクロウェーブ、すりおろし、高圧等の処理により、物理的な損傷を与えることで、前駆体のグルコラファニンと反応触媒酵素であるミロシナーゼの接触を促進し、スルフォラファン生成量を増加させる研究例が報告されているが、環境気体組成を変化させる方法は初めての発見となった。pHの経時変化を測定したところ、気体遮断袋包装試料では大気に比べて高く推移した。常識的には、気体遮断袋内のような高CO2環境ではpHが低下すると予想されるが、本研究では異なった。過去の知見で、細胞膜機能を喪失した組織内ではpHが上昇すると報告されている。このことから、気体遮断袋包装試料では、低O2あるいは高CO2に起因して細胞膜機能を喪失し、グルコラファニンの拡散係数が大きくなったためにミロシナーゼとの接触機会が増え、スルフォラファン増強につながったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、食品ロス抑制に有効な包装貯蔵技術に関する研究にて、特に顕著な新規知見を得ることができたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、流通・貯蔵過程で鮮度保持に有効な青果物の包装貯蔵技術や、鮮度の客観的評価に有効な手法について、研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究途上で新たな現象を発見し、その科学的根拠を解明するために時間を要したため、全体的な経費執行の進行に遅れが生じた。 (使用計画) 現在は新発見現象の科学的根拠の解明が完了したため、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金を合算した費用を執行して、当初の計画通り研究を進める。
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Remarks |
第26回日本包装学会年次大会での発表"Mechanism of sulforaphane accumulation in a broccoli floret stored in a high barrier pouch."に対し、日本包装学会からポスター賞を授与された。
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