2015 Fiscal Year Research-status Report
食の分かち合いと低炭素・循環型供給システムの融合による持続型社会形成の追及
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15KT0027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武内 和彦 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 教授 (90112474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 禅 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20462492)
松井 孝典 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30423205)
齊藤 修 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 客員准教授 (50397668)
松田 浩敬 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任准教授 (50451901)
神山 千穂 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステイナビリティ高等研究所, 研究員 (70644201)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 市場を介さない食料 / わかちあい / 小規模農業 / アカウンティング / モザイク景観 / 数理プロセスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
H17年度は、生物多様性と生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)の概念枠組みを援用しつつ、研究グループ全体で、日本だけでなく国際的な比較が可能な共通の概念枠組みとインベトリ構築を進めた。その一環で、市場を介さない食の流通の実態と食に伴う多様な恵みのアカウンティングの方法開発を、石川県能登半島を対象に取り組んだ。具体的には、当該地域の複数の集落、地区を対象としたアンケート調査を実施し、調査票を市場を介さない自家消費食料の多様性と、自家消費食料の空間スケール間の流れと社会関係資本の関係を明らかにした。同時に、モザイク景観の基盤となる農作物、特用林産物、海産物の複合的な生産、採集の現状を調査し、世帯人数の減少や高齢化から労働力の減少に伴い、生産のあり方がここ40年で大きく変化し、生物文化多様性を構成する要素が大きく減少していることを明らかにした。 また、他の事例地区において、主に森林由来の生態系サービスが農山村の食料(野菜、菓子)や伝統工芸品(織物)の生産,燃料利用等の生活文化に果たす役割をインベントリ化するとともに、農山村の生活・文化の地域的な差異,存続の状態を質的・量的に明らかにした。 他方、食料供給システムの物質・エネルギー解析(ライフサイクル分析)を能登半島、佐渡島、八丈島で行うための各種モデルと基盤データの整備を進めた。具体的には、自然資本・生態系サービスの供給ポテンシャルの遷移予測モデル、森林生態系サービスの需給マッチング最適化モデル、社会ー生態統合システム内の高解像度ソースシンクトラッキングによるLC-CO2空間可視化モデル、バイオマスを軸とした再生可能エネルギーミックス最適化数理モデルの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは、先行して進めていた能登半島、八丈島、佐渡島それぞれでの研究蓄積と有機的に連携できたことから、研究初年度から実質的な研究成果を予想を上回るペースでうみだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、食のわかちあいに関する国内外での情報収集と事例分析を進めつつ、H28年度は特に、市場を介さない食の流通の実態と食に伴う多様な恵みのアカウンティングの方法開発と食料供給システムの物質・エネルギー解析(ライフサイクル分析)、さらにわかち合いによる食の多様性、物質・エネルギー、農村ランドスケープとの関係分析を進める。また、本テーマは、欧州の研究者も高い関心を示しており、今後は欧州の事例との比較研究を共同で進め、国際的に通用する分析枠組みとアカウンティングの仕組みの提案につなげる。具体的な推進方策を以下の3点に整理した。 (1)市場を含む複数の食のネットワーク(サプライチェーン)を体系的に整理し、消費地と生産地との関わりが消費行動に与える影響を評価する。また、食の分かち合い系統における、物質、エネルギー、環境負荷を定量的、空間的に推定するために必要な項目の評価を、共同研究者との連携により行う。 (2)一般的な農村地域を事例として、生産者と消費者をつなぐ農産物のサプライチェーンをローカライズさるとともに生産―流通段階において低炭素化、資源の循環利用、生物多様性保全に資する政策のあり方を研究する。 (3) より詳細な地域スケールが表現できるモデルへのダウンスケーリングをするために、現地ヒアリングや入手可能な二次情報との情報統合を行うことでモデルの精度を向上させる。
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Causes of Carryover |
当初計算規模が不明であったため演算用ワークステーションの執行を繰り越したが、要求計算規模が明らかになる平成28年度以降に執行する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、八丈島、佐渡島、能登半島でのフィールド調査を継続して行うとともに、研究成果は毎年,国内・国際学会にて発表するほか,英文国際学術誌に投稿する(学会発表費用,投稿料,英文校閲費を計上)。また、海外での類似研究事例との比較分析を目的として、コペンハーゲン大学、ワゲニンゲン大学等の研究者と連携し、共同で国際研究ワークショップを開催する。そのための海外旅費を28 年度予算には計上している。
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Research Products
(12 results)