2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0035
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
安達 貴浩 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50325502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80432863)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 三陸海岸 / 無給餌養殖 / 複合養殖 / 底質の有機化 |
Outline of Annual Research Achievements |
三陸海岸において無給餌複合養殖を確立するためには,まず養殖環境そのものを適切に評価する必要がある.このため,2016年度までに,水質・底質環境および複合養殖の対象となる養殖水族を定量的に評価する数値シミュレーション・モデルを構築した. 研究対象である三陸沿岸では,震災時の津波によって底泥がフラッシュされ,その後,底質環境も継続的に変化していることから,養殖環境の評価においては,その影響を適切に評価する必要がある.このため,2017年度に実施した現地調査においても,これまでと同様に底質環境の実態を明らかにすることに重点を置いた.2017年度の調査では,フルボ酸,フミン酸,さらには各種温度による強熱減量と,難分解性有機物と易分解性有機物とこれらとの関係を明らかにすることを目的とし,複数の底泥サンプルを取得すると同時に,底泥サンプルの観測誤差の影響を検討した.今後はこの結果を踏まえて,底質モデルでの再現性を向上させていく. 以上の取り組みに加えて,震災前の物理場を検証するための観測データを入手した.これにより,2017年度までに構築したモデルを使用して,物理場の再現性の検証を開始している.さらに,養殖域での低次生態系モデルを適切に再現するために,これまでの植物プランクトンモデルでは再現が難しかった栄養塩の供給と植物プランクトンの増殖のタイムラグについて検討を行い,これらの関係をより適切に評価できるモデルを新たに導入した.これにより,複合養殖の一つであるワカメと植物プランクトンとの競合関係がより適切に評価できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無給餌複合養殖の有効性や問題点を適切に評価するためには,数値シミュレーションを活用した検討は不可欠であり,得られた結果の信頼性を高めるためには,物理環境モデル,低次生態系モデル,底質モデルの改良が必要である.このようなツールの改良が着実に進んでいることから,研究はおおむね順調に進んでいると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
物理環境モデル,低次生態系モデル,底質モデルの改良が概ね完了したことから,これらモデルを結合した総合的な検討を行うと同時に,複合養殖の対象となる養殖水族モデルを完成する予定である.
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Causes of Carryover |
本研究は,岩手県大槌湾を対象に安定した生産量確保のための無給餌養殖の確立を目指すものである.当初の予定通り研究が進捗していたが,平成29年8月に岩手県で猛威をふるった台風により,平成29年度に予定していた養殖環境調査を予定通り実施できなかった.また,平成29年度の調査結果は台風のイベント現象を強く受けていることもあって,次年度にも研究実施の必要があり,事業期間を延長した.平成30年度には,調査費,分析費,人件費に助成金を使用する予定である.
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