2016 Fiscal Year Research-status Report
失われた地力の回復を担う土壌団粒:団粒構造内部の窒素の存在形態と微生物の代謝活性
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15KT0036
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域, 上級研究員 (80456748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50554466)
長尾 眞希 (浅野眞希) 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80453538)
森泉 美穂子 龍谷大学, 農学部, 准教授 (10220039)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 肥沃度 / 土壌有機物 / 有機態窒素 / 生物地球化学 / 堆肥 / 不耕起 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
●2年目にあたるH28年度は、数十年間行われてきた長期連用試験圃場の化成区と堆肥連用区における有機物(特に有機態窒素)の存在形態の分析を更に進めた。昨年度までに、比重分画法により土壌粒子を低比重から高比重の5つの画分に分離し、ミクロ団粒を主体とする高比重の粒子ほどC:N比の低い(つまり窒素に富んだ)有機物を含んでいることを明らかにした。 ●本年度は、先ず各比重画分から有機態Nを可溶化するための手法検討(NaOH vs.ピロリン酸:PP)を行った後、抽出効率が高かったPPによって可溶化した有機態窒素の分子量分布を液体クロマトグラフィー法によって調べ、また一部は塩酸加水分解処理を行った後、アミノ酸組成分析を行った。化成区と堆肥区の違いは不明瞭であったが、比重に応じた幾つかのパタンが検出された。現在、アミノ酸回収率などの詳細を確認しているが、非常に新しい知見に繋がる可能性があるため、解析・追加実験を進める。また、未だ分析途中であるものの、各比重画分の安定同位体比分析により高比重画分ほどd13C、d15N値が高まる傾向もありそうなことが分かってきた。 ●インドネシアの強風化土壌に関しては、24年間の不耕起栽培によって対照区(耕起区)に比べて、土壌窒素が僅かながら有意に増加することが示された。更に、この窒素の増加は、植物残渣を主体とする画分(free LF, occluded LF)だけでなく、団粒を破壊するレベルの超音波エネルギー量によって壊れないほど強く鉱物粒子に結合した有機物画分で主に起こっていることが明らかになった。 ●また団粒分画手法と培養実験を組み合わせ、長期堆肥連用+不耕起栽培によって形成されるマクロ団粒構造が破壊されると土壌動物によるバクテリア捕食が高まり、炭素の無機化が高まることを実験的に示し、国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
●日本の長期連用試験圃場のサンプルについては、茨城、埼玉、和歌山の化成肥料区および堆肥区の作土層土壌の比重分画およびバルクと各画分の基礎分析が完了した。また水田土壌についても比重分画を進めることができた。 ●有機態窒素の抽出およびその後の液体クロマトグラフィーそしてアミノ酸の分析は、多くの分析ステップを含むやや複雑なプロセスである。このため時間を要しており、まだ回収率や再現性について検討が必要な部分もあるが、新規性の高い結果が出つつある。 ●熱帯強風化土壌についても、分散条件の検討後に比重分画を行い完了した。回収率も妥当であった。この一部の土壌については、マイクロCT法によるミクロおよびマクロ団粒の3次元構造解析を行った(データ解析に苦労している)。 ●以上から、全体としては順調に進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に検討した各比重画分中の有機態窒素の化学分析から、新規性の高い結果が出つつあるため、これを更に進める。これによって、植物残渣および堆肥として加入した有機態窒素が時間経過と共にどの様な形態で団粒中に取り込まれるかを明らかにすることを目指す。
団粒構造に関しては、放射光源X線を利用したマイクロCT法の分析を、雇用したポスドク研究員を中心に進める。CT分析に習熟する浦本氏を新たな分担研究者として参加して貰い、堆肥連用や不耕起栽培によって形成されるマクロおよびミクロ団粒の物理的特徴および内在する有機物の特徴の評価を行う。
団粒構造と微生物活性の関係については、既にパイロット試験を行ったDNA染色法を、化学分析を行った同様の土壌サンプルを用いて行う。また、ミクロ団粒およびマクロ団粒からのDNA抽出およびシークエンス解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初想定していた実験コストが大幅に削減されたため。具体的には、比重分画に使用する重液を廃棄せずにリサイクルするシステムを確立しコストダウンが可能になった。また、X線CT分析のための前処理を連携研究者の実験室で行うことで、それに必要な器機・試薬類を自前で揃えずに済んだため。
外注予定であった分析(土壌微生物のDNAシークエンス、放射性炭素分析)を未だ進めていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポスドクをフルタイム雇用し、データ処理や解析にかなりの労力がいるため進捗が遅い微細団粒構造の解析(X線CT法)を進める。
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Research Products
(4 results)