2016 Fiscal Year Research-status Report
有機物の長期連用が土壌微生物群集に及ぼす影響の分子生態学的解明
Project/Area Number |
15KT0037
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
池田 成志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター 大規模畑作研究領域, 上級研究員 (20396609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 淳 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (00321753)
関山 恭代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品分析研究領域, 主任研究員 (60342804)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 有機物 / 堆肥 / 土壌微生物 / 窒素 / 化学肥料 / メタボローム解析 / 共生微生物 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県農業開発総合センターの堆肥長期連用圃場におけるサツマイモ栽培でサンプリングされた土壌DNAを用いて、当該圃場の異なる肥培管理条件(化学肥料区、無窒素区、各種堆肥施用区等)が土壌細菌群集に与える影響について16S rRNA遺伝子を標的としたパイロシークエンシングによる分析を進めた。 その結果、各種堆肥(牛糞、豚糞、鶏糞由来の各種堆肥)の長期連用施用を行った土壌は化学肥料のみを長期施用した土壌に比べて種レベルでのOTU数(97%類似度でクラスタリングを行った場合に観察されたOTU数)が高い傾向が観察され、無窒素区(リンとカリウムのみの化学肥料施用区)は堆肥の長期連用区と化学肥料区の中間的な値を示した。同様に、各種の多様性指数(Cao1、ACE、シャノン、シンプソン等)についても堆肥の長期連用区が高く、化学肥料区が低く、無窒素区が堆肥施用区と化学肥料区の中間的な値を示すということが明らかとなった。以上から、堆肥のような有機物の長期連用が土壌細菌群集の群集構造に大きな影響を与え、化学肥料のみの栽培条件との比較において、有機物の長期的な施用が土壌細菌群集の多様性を増加させることが示唆された。 上記の土壌細菌群集について主座標分析を行った結果、各種堆肥の長期施用土壌は化学肥料区とは明確に大きく異なる細菌群集構造を持つこと、無窒素区は上述の各種の多様性指数の分析と同様に堆肥長期施用区と化学肥料施用区の中間的な土壌細菌群集構造を持つこと等が明らかとなった。また、片倉コープアグリ株式会社の有機質肥料の長期連用圃場において土壌及び作物体(ダイズ、ハクサイ等)のサンプリングを行った。 今年度は系統的な多様性解析および、土壌の化学性と系統的多様性の間の相関関係等の検討及び、昨年に引き続き、サツマイモ組織のメタボローム解析と共生微生物の分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
圃場を中心にした微生物生態研究であるため、年度前半に栽培試験とサンプリングを行った後、年度後半に分析機器を集中的に使用するため秋から冬にかけて機器の故障が一昨年と同様に昨年度も発生し、部品の取り寄せ等により植物共生微生物群集の分析等の作業が遅れている。昨年度は実験の律速ステップにあたる細胞破砕の装置の消耗品部分が破損し、国外からの取り寄せのため当該部品の納品が3月末となってしまったため、年度後半の遺伝子分析などの外注作業等が間に合わず、当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
鹿児島県農業開発総合センターの堆肥長期連用圃場及び片倉コープアグリ株式会社の有機質肥料長期連用圃場においてサンプリングされた土壌と作物体について、土壌微生物、共生微生物、作物体の代謝物の分析を進める。また、得られた結果について順次論文投稿に向けた取りまとめを進める。
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Causes of Carryover |
圃場を中心にした微生物生態研究であるため、年度前半に栽培試験とサンプリングを行った後、年度後半に分析機器を集中的に使用するため秋から冬にかけて機器の故障が一昨年と同様に昨年度も発生し、部品の取り寄せ等により植物共生微生物群集の分析等の作業が遅れている。 昨年度は実験の律速ステップにあたる細胞破砕の装置の消耗品部分が破損し、国外からの取り寄せのため当該部品の納品が3月末となってしまったため、年度後半の遺伝子分析などの外注作業等が間に合わず、当初の計画よりも遅れた。その結果、平成28年度分の予算として執行予定だった外注費を中心に関連経費についての次年度への繰越が必要となった。 また、植物組織の代謝物の分析の前処理として凍結乾燥機を使用するが、使用中の停電などにより若干の分析試料を予定通りにNMRによる分析に供試する予定が計画よりも少し遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により昨年度後半にDNA調製ができなかった土壌と作物組織からのDNA調製、及び凍結乾燥処理等を行い、鹿児島県農業開発総合センターと片倉コープアグリ株式会社の土壌微生物及び共生微生物の分析、メタボローム解析を進め、遅れを取り戻す予定である。
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Research Products
(4 results)