2016 Fiscal Year Research-status Report
農地環境のメタ戦略:土壌・気象・作物の組み合わせ最適解による農地循環力の強化
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15KT0038
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
持田 恵一 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (90387960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 隆志 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (10228819)
最相 大輔 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (90325126)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | オオムギ / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
岡山大学資源植物科学研究所の実験圃場で育成したオオムギの葉のトランスクリプトームおよび植物ホルモンの変動を、生長ステージの進行に沿って毎週葉をサンプリングし、調査した。野生オオムギ系統と在来品種についてトランスクリプトームの変動と同時に植物ホルモンの変動を明らかにし、その系統間差と年次間差を比較した。4ヶ月にわたる生長をZadoksスケールにそってこれら2系統間で比較したところ、分けつ期の終りから節間伸長が開始する生育遷移は共通するものの、幼植物期の葉令、分けつ数、節間伸長時期が在来品種で先行していた。葉身で検出される7種類の植物ホルモンは生長段階に応じて多様な変動パターンを示したが,何れの系統でも節間伸長の開始期を境に大きく変動した。葉身の植物ホルモン量は、生育段階に応じた蓄積パターンを示したことから、野外生育オオムギの生長を規定するバイオマーカー様分子として利用できることが示唆された。一方、トランスクリプトームの解析では、モデル植物で同定された開花関連遺伝子のオオムギ相同遺伝子の発現データを用いることで、各生育ステージをほぼ規定できることを、オオムギ開花関連遺伝子の発現量に基づく生育期の自己組織化マッピングにより示すことができた。そこで、開花関連遺伝子の発現データを説明変数とし、そのオオムギの生理状態が開花期から何週前であるかを目的変数とした機械学習によるモデリングを行い、開花関連遺伝子の発現状態からオオムギの開花期を予測する予測器の作成を試みた。学習方法は、二層の隠れ層からなる多層ニューラルネットワークを用いた。在来品種での予測精度は最大でおよそ80%であったが、栄養成長期の初期や開花期の前後で予測精度が低下した。このことは、環境変動に対するオオムギの生理状態の頑健性が生長ステージによって異なることを示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って、野外栽培オオムギの生長状態に関するパラメーターに基づいて、開花期予測のための機械学習モデルの構築が進められた。また、環境の年次変動をパラメーターとして組み込むことは、研究機関の数年の栽培反復では反復数が足らないことが懸念されたが、岡山大学が保有する20年間の栽培記録の利用が可能になり、環境変動と開および遺伝子型をパラメーターとした開花期モデルの構築も現実的になった。これらの点から順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトームデータに基づく野外栽培オオムギのモデリング研究の成果を論文として取りまとめているので、この成果の公表を進める。とくに、開花関連遺伝子以外の、転写因子、ストレス応答遺伝子といった遺伝子機能のクラス毎に予測精度の調査を行い、どのような機能に関わる遺伝子の組み合わせがオオムギ生長の記述子として有用かを明らかにする。また、岡山大学の過去のオオムギ栽培記録と気象データおよびオオムギの遺伝子型を用いた開花期予測モデルの構築を行い、遺伝子型と環境の相互作用を実装した機械学習モデルを作成する。
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Research Products
(3 results)