2016 Fiscal Year Research-status Report
農耕地生態系の潜在的物質循環ポテンシャルを可視化する
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15KT0039
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高見 英人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 上席研究員 (70359165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 敦 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 特任教授 (10267495)
磯部 一夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30621833)
竹本 和広 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40512356)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | メタゲノム / 生理代謝ポテンシャル / 農耕地土壌 / 森林土壌 / MAPLEシステム / 微生物生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、27年度に山形、東京、熊本の水田、畑地、各3地点から採取した土壌のメタゲノム配列(全18サンプル)各300万リードをMAPLEシステムに供試し、約730種類のKEGG機能モジュールに対する充足率、アバンダンス、リボソームタンパク質に基づく菌叢組成などを算出した。このうち、菌叢の組成比と完成モジュールのアバンダンスをもとにそれぞれ、非計量多次元尺度構成法 (NMDS) を用いて統計解析を行った。 その結果、菌叢、モジュールアバンダンスとも水田と畑地が有意な検定結果をもって差別化され、水田と畑の菌叢とモジュールアバンダンスには明らかな違いがあることが分かった。また、水田は、環境要因のアンモニアと畑地は硝酸の濃度と相関が強いこともわかった。地域性については、水田、畑地を問わず東京と熊本は菌叢、モジュールアバンスのパターンが極めて類似しているのに対し、山形では大きく異なることがわかった。 これとは別に機能アバンダンスに基づき正準相関分析 (CCA) を行ったところ、その傾向はNMDSと同様に水田と畑地は明確に差別化され、地域性についても山形が他の2地点と比べ明らかに異なる傾向を示した。CCA解析では、畑地と相関が強い機能として酸性を感知する2生物制御系、セロビオース輸送システム、イノシン一リン酸塩の合成などが、水田と相関が強い機能として、リン酸塩輸送システム、C10-C20イソプレノイド合成などが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、27年度までに配列決定がなされた18サンプルのMAPLEシステムによる解析を予定していたが、これまで、MAPLEによる解析が終了し、これらの結果に基づく非計量多次元尺度構成法や正準相関分析法による解析を行い、水田と畑に明らかに違いがあることを明らかにした。 また、全国各地から集めた天然林土壌20サンプル、人工林土壌19サンプルおよび牧草地1サンプルからDNAを抽出し、HiSeq 2500を用いてMAPLシステムでの解析に必要な400 base以上の塩基配列を各サンプルから300万配列得ることができた。 さらに、MAPLEシステムを一部改良し、モジュールアバンダンスの表示方法をこれまでの最高値から、合計値に変えることでその後の解析の解釈を容易にすることができた。さらに、MAPLEの結果をグラフ化するソフトも開発し、解析にかかる時間が軽減された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、28年度までに配列決定された人工林、天然林と牧草地由来の土壌40サンプルの塩基配列各300万リードをMAPLEに供試し、昨年度の水田、畑の場合と同様に、リボソームタンパク質に基づく菌叢組成、モジュールの充足率、アバンダンスを算出し、非計量多次元尺度構成法や正準相関分析などを行って、人工林、天然林、及び牧草地の特徴付けを行い、それぞれの土壌に特徴的な生物種や機能などをハイライトする。 また、人工林、天然林の地域性による生物種の違いや相関する機能の違いを明らかにし、環境要因との相関を考察する。最後に、昨年度行った水田、畑地土壌のデータも合わせた総合解析を行い、水田、畑地、人工林、天然林、牧草地が持つ機能的アバンダンスの違いや菌叢組成の違いなどから、各土壌サンプルにおける物質循環ポテンシャルの違いを可視化する。 可視化には、粗視化代謝マップを用いて行い、すでに開発済みのマップ描画システムを改良して、結果の違いを見やすくハイライトする予定で進める。
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Research Products
(4 results)