2017 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Heritage and Future-oriented Coexistence: Advancing Deeper-level Peacebuilding through Protection and Recovery of Cultural Properties under Armed Conflicts
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15KT0044
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星野 俊也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい教授 (70304045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石澤 良昭 上智大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10124851)
Hawkins Virgil 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10511040)
中内 政貴 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10533680)
原本 知実 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい研究員 (20558100)
日高 健一郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい教授 (30144215)
眞嶋 俊造 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50447059)
富田 大介 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (70623809)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 遺跡の「遺産化」 / 事例研究コソヴォ / 事例研究マケドニア / 事例研究カンボジア / 人の育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は各自の研究を深めるとともに、研究成果を発表する場として国際シンポジウムを1回、国内シンポジウムを1回開催した。 各自の研究においては、歴史遺産がどのように深層の平和構築に結びつけられ得るのかについて検討を続け、各自が専門とする地域の事例間の比較を行った。その中で明らかになったのは、文化遺跡保存やUNESCOの活動などで一般に先進的とされる欧州の事例において、遺跡が異なる民族や文化のアイデンティティの文脈で利用され破壊や攻撃の対象とされる傾向がみられたのに対して、紛争や虐殺の影響が現在も残るカンボジアの事例で、アンコールワット遺跡が民族や宗教の分断を超えるカンボジア人全体の統合と共生の象徴とされてきた現実であった。そこで本プロジェクトでは新たな分析概念として文化遺跡の「遺産化(heritagization)」を打ち出すこととした。「遺産化」とは、歴史的な遺跡が後世の政治や人の手によって特定の意味を付与された「遺産」として再解釈されるプロセスを指す。つまり、一つの遺跡が、現代の政治や人が介在することで全く異なる意味を表象することも可能であり、本プロジェクトでは、「遺産化」のいくつかのパターンを分ける要因について検討を加えてきた。現段階での結論として、第一に遺跡そのものが持つ①国内的な文脈や地位、②国際的な知名度や地位、③経済的な価値、第二に遺跡の存在する国の①アイデンティティをめぐる政治的対立の有無や深刻さ、②異なる文化集団間の経済的な格差、③遺跡を利用しようとする政治エリートの有無、第三にその社会の①多様性やそれを包含する成熟度、②遺跡に携わる「人」の育成度合い、などがこの「遺産化」プロセスを左右する要因として特定できた。 今後、これらの分析の精緻化と、未来共生社会の形成に向けた教育プログラムへの応用の可能性を最終的な研究成果として取りまとめる予定である。
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