2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな感染症等生物学的脅威を巡る新たな紛争ランドスケープの研究
Project/Area Number |
15KT0054
|
Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
齋藤 智也 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (80327501)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木賀 大介 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 准教授 (30376587)
四ノ宮 成祥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 分子生体制御学, 教授 (40505260)
牧野 友彦 国立感染症研究所, 感染症疫学センター, 研究員 (70645340) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
|
Keywords | バイオセキュリティ / 安全保障 / 公衆衛生 / デュアルユース / 倫理教育 / 紛争 / 公平性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物学的脅威の紛争解決ランドスケープの検討では、生物兵器禁止条約をテーマとした第2回バイオセキュリティ研究会を開催し、第8回運用検討会合における議論とその決裂を巡る対立関係を明らかにすると共に、デュアルユース性に関する国際的連携の場の今後の構築のあり方を検討した。また、米国CDCとFBI主催ワークショップに参加し公衆衛生と安全保障分野の協調による生物学的脅威への対処のあり方を検討した。 生命科学のデュアルユース性に対する国際的な連携手法については、世界健康安全保障イニシアチブ主催のワークショプに参加し、特に保健セクターの視点から、グローバルなガバナンスのあり方を討議した。教育手法については、合成生物学の世界大会iGEMおよびiGEMにおける測定技術の標準化委員会に参加し教育機会のあり方と合成生物学の今後に重要となる標準化が、バイオセーフティの向上に繋がるかについて議論した。また、生命科学者のためのデュアルユース倫理教育実施状況についてのアンケート調査を分析し、教員側の問題意識として、バイオセーフティ>バイオセキュリティ>デュアルユースの順に認識度が高く、また、教育実施例については、生命倫理>バイオセーフティ>バイオセキュリティの順に実施率が高いことを確認した。 新興感染症の監視にかかる国際法の錯綜と外交紛争の検討については、病原体を巡る公平性(Equity)、健康(Health)、安全保障(Security)の3軸の価値観の対立という観点から検討を進め、検体共有に影響する名古屋議定書の課題への現実的な解決策の提言に加え、新たな検体共有に特化した枠組みの可能性を「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約」と比較検討して長期的な課題を提示した。 成果の社会還元のため、第1回バイオセキュリティ研究会の会議録と講演ビデオをウェッブサイトbiosecurity.jpに掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討内容については、順次国内・外で学会発表を実施するとともに、論文発表も実施している。昨年から実施してきた日本のバイオセキュリティ政策ランドスケープのレビューは、生物化学兵器剤防護国際シンポジウムで発表した。また、デュアルユース技術のガバナンスの取り組みについて、国内の取り組みを整理し、米国微生物学会で発表を行った。日本生命倫理学会および日本バイオセーフティ学会ではシンポジウムを企画し、デュアルユース技術のガバナンス、そして感染症と安全保障の境界領域問題としてのバイオセキュリティ、生物兵器禁止条約や病原体共有を巡る対立構造を提起し、学際的な問題提起を行ってきており、概ね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
グローバルな生物学的脅威の紛争解決ランドスケープの検討については、公衆衛生と安全保障の接点の形成について議論を深めていく。世界健康安全保障行動イニシアチブによる公衆衛生と安全保障セクターの協働ワークショップへの参加や、セキュリティセクター・公衆衛生セクター双方の国内外研究者および政府関係者との意見交換を進めていく。そのうえで、生物兵器禁止条約における今後の取組みを含む政策提言につなげていく。 バイオセキュリティ教育については、特に合成生物学分野における学会等の機会を活用した教育や討議空間を形成していく。また、2016年度のアンケート結果を参考に、現行教育課程の内容をなるべく変えない形でデュアルユース問題を追加的に言及できる方法を含め、教育現場への負担を抑えつつ、科学者への意識啓発を推進するための包括的な取組みの検討を行う。 新興感染症の情報共有に関する国際法の錯綜と外交紛争に関しては、根底にある価値観として人権概念の国際規定が双方に与える正統性を整理した上で、安全保障と公衆衛生が共有する目標と相反する目標の構図を地球環境問題などの持続可能な開発目標にあてはめ、国際的な合意が可能な論拠形成と制度設計につき検討し、行政機関、国際機関等への提言につなげていく。引き続きバイオセキュリティ研究会を開催し(年間3回程度)、上記研究班の成果の還元のみならず、安全保障分野と公衆衛生分野の議論の逸脱をカバーする一体的な討議空間を構築し、バイオセキュリティ分野の紛争コンテクストと、バイオセキュリティ向上の方策の多角的な検討を進める。そして、最終成果報告会を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
初年度に研究分担者として研究費の配分を予定していた者が、異動により連携研究者として参画することとなったため、研究体制の準備・環境の移行に時間を要し、初年度から2年度の繰越が発生していた。2年次に概ね計画通りに使用できたがなお余りが出た。また、バイオセキュリティ研究会を2回用意していたところ、スケジュール調整がつかず、1回しか開催できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
バイオセキュリティ研究会の回数を増やす(年間2回程度->3回)ほか、遅れていた海外調査(米国を予定)のための旅費として使用予定である。
|
Research Products
(21 results)