2016 Fiscal Year Research-status Report
少数系から複雑反応ネットワークを含む遷移状態概念の深化と制御
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15KT0055
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 央 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90463728) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 遷移状態 / 非断熱交差 / 特異点論 / 1分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、分子のエネルギーを上げていくと遷移状態が分岐するだけではなく、その崩壊が引き起こされ、反応座標切替等の新規な化学反応が生起すること、およびその実験的検証法を提示してきた。化学反応に分子の電子状態の変化が伴う場合には、非断熱遷移の影響も考慮する必要がある。エネルギー準位間の交差は、例えば、DNAが紫外線照射からダメージを少なく抑えるのにも重要であるという指摘がある。本年度は、応用特異点論の方法を援用することにより、非断熱交差近傍の分岐の一般論を構築した。非断熱交差近傍を2行2列のハミルトニアン行列表現で表し、(交差がどれくらい一般的に生起し得るかの指標に相当する)余次元が従来知られていた0の交差パターンからこれまで知られていなかった7までの全交差パターンを応用特異点論により分類することに成功した。新しく見つかった交差パターンは、例えば、微小な外場により構成することが原理的に可能である。トポロジカル絶縁体の物性予測と制御、新規光化学制御に繋がるものと期待される(Journal of Mathematical Physics 査読中)。 細胞集団においてリーダー細胞とそれを追随するフォロアー細胞に役割分化するメカニズムは未解明であった。細胞性粘菌の離合集散ダイナミクスの微分干渉顕微ムービーに対し、離合集散を誘発するリーダー細胞の出現ダイナミクスを力学系理論分野で開発された渦度、ラグランジュ協同構造に基づいて解析し、カルシウムイオン伝搬に誘起される細胞集団のダイナミクスの定量化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究分担者である寺本助教が6月に日立基礎研センタの客員主任研究員として異動・昇進されたため(2017年4月1日に准教授として当該研究室に着任されたため、最終年度は当初予定通り遂行できる予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
反応座標スイッチングを直交する電場磁場中の水素原子のイオン化反応において、実験的に検出するための実験プロトコルの策定をする。また、その系でハミルトニアンの量子共鳴状態を計算し、その量子共鳴状態の構造が反応座標スイッチングのエネルギーよりも下の場合と上の場合にどのように質的に変化するのかを調べる。実際の分子系において反応座標スイッチング機構を用いた制御を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度始め、博士研究員として雇用予定していた英国ワ―ビック大学数学科で博士号を取得された研究者がご尊父の脳腫瘍のため、海外での研究生活を断念せざるを得ない状況となり、適任者の選別が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
博士研究員(カリフォルニア大学Merced校のSulimon Sattari博士)の雇用費として計上する予定である。
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