2017 Fiscal Year Research-status Report
遷移状態制御を基盤とする多金属協同作用系触媒の理論設計
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15KT0059
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60401535)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「理論計算による遷移状態制御に基づく金属間協同作用(触媒機能)の理解と深化」を鍵として,異種二核金属錯体 を触媒とする不活性分子の革新的変換反応を開発することである。前年度までに,6,6"-bis(phosphino)terpyridineをN,P-多座配位子とするAl-Pd錯体が特徴的な構造と,高いシラン活性化能を持つことを明らかにした。本年度は引き続き詳細な検討を行い,本アルミニウム-パラジウム錯体が低反応性分子である二酸化炭素のヒドロシリル化において,従来の報告を凌駕する世界最高の触媒活性(TON = 19300/h, 室温,常圧) を示すことを明らかにした。また,反応中間体であるヒドリド錯体について詳細に構造解析とDFT計算を行い,支持配位子をアルミニウムとした時だけ,他の13族金属(ガリウム,インジウム)の場合よりも,そのトランス位にある結合が大きく伸長することや,極めて高いイオン結合性を持つことを明らかにした。さらに,N,P-多座配位子上の置換基を多様に変えることにも成功し,それらの適切にチューニングした錯体を用いることで,様々なカルボニル化合物のヒドロシリル化反応やアルコールの脱水素シリル化反応が進行すること,またその反応性が通常のパラジウム錯体触媒系とは異なることを明らかにした。これらの結果は,異種二核金属錯体の特異な触媒機能を実証し,合成化学における有用性を示したものとして大きな意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Al-Pd錯体の特異な触媒機能を明らかとし,論文発表することができたから。また,その起源についても理論計算等で解明することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
検討の過程で明らかになった,Al-Pd錯体以外の二核金属錯体の触媒機能とその機構について明らかにすべく,反応開発研究と理論計算による機構解明を検討する。
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Causes of Carryover |
本研究で合成した金属錯体について二酸化炭素との反応を検討していたところ,当初検討していた金属以外に,他の金属錯体も高い触媒活性を示すことが最終年度に明らかとなった。またその反応機構について検討した結果,当初予期していた中間体は活性を示さず,他の中間体が真の活性種となっている可能性が示唆された。そのため,補助事業期間を延長し,反応条件の精査と,反応機構の解明を再度行うこととなった。助成金は,主に薬品類とガラス器具の購入費用に充てる予定である。
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