2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0060
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 康裕 東京工業大学, 理学院, 教授 (60213708)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | コヒーレント制御 / 遷移状態 / 単分子反応 / チャープパルス / イオンイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基本的な多原子分子における解離や異性化のような単分子反応に関して、遷移状態近傍の振動量子状態を実空間で可視化することを目的とする。本目的の実現のために、分子振動状態を実空間イメージとして明確に捉える実験手法の確立、ならびに、振動基底状態からの直接アクセスが困難な遷移状態近傍の高励起振動状態に存在する分子を選択的かつ高効率で生成する手法の開拓を行う。研究3年目である平成29年度では、以下の成果があった。 1)これまでに、単一量子固有状態の実空間イメージングへの取り組みとして、電子励起したNO分子について研究を進めている。ここでは、波長可変レーザーによって NOを第一電子励起状態(A状態)へ遷移させ、その後、円偏光フェムト秒パルスによりクーロン爆発させる手法を用いている。解離生成物であるN+の2次元画像観測により、A状態の特定の回転準位に対応する実空間イメージの取得が行える。これまでは、紫外光による1光子励起によってA状態の生成を行ってきたが、本年度は、可視光による2光子励起の適用について検討を行った。 2)回転ならびに振動運動の時空間イメージングの研究の一環として、断熱冷却により生成した(N2)2クラスターについてクーロン爆発イメージングによる観測を行ってきている。解離イオンの空間配向分布が周期的に変動する現象を見出しているが、フーリエ変換解析によって回転準位のエネルギー差に相当するビート信号を抽出することができた。その結果、クラスター全体の回転定数を精度よく決定し、N2分子間距離を確定することができた。さらに、内部回転励起状態に対する信号を帰属することができ、クラスター内でN2分子がほぼ自由に内部回転していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで実験的にほとんど研究例のなかった(N2)2クラスターについて、クーロン爆発イメージングを適用して回転ならびに振動運動の時空間イメージングを実現できたことは、当該研究グループの独自性がいかんなく発揮された成果であると評価できる。特に、空間配向分布の時間変化を長時間にわたって追跡することにより、回転準位エネルギーについて詳細な情報が得られることをデモンストレートすることができ、時間領域における高分解能分子分光として新規な方法論を提示できた。
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Strategy for Future Research Activity |
回転ならびに振動運動の時空間イメージングは、分子クラスターに対する全く新しい研究手法として広範な適用が期待しうる。今後は、(N2)2クラスターにおける測定結果をとりまとめて、振動や回転運動の詳細に迫るとともに、他の分子クラスターへの適用も行い、方法論の確立をはかる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は6万円以下であり、本年度の支出はほぼ予算通りの執行になっている。次年度使用額は、研究の遂行に不可欠な消耗品に重要予定である。
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