2017 Fiscal Year Research-status Report
量子論的遷移状態および量子論的反応経路の確立とその応用
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15KT0067
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (00267410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石元 孝佳 広島大学, 工学研究科, 共同研究講座准教授 (50543435)
宇田川 太郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 量子論的遷移状態 / 量子論的反応経路 / 量子シミュレーション / 量子多成分系分子理論 / 経路積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、網羅的にIRCや遷移状態を求めるのではなく、核の量子揺らぎも含めた有効自由エネルギー超曲面における1.量子論的遷移状態および量子論的反応経路を新たに構築・提唱する。特に初期経路依存が小さい探索手法としてストリング法、さらにはそれを発展させた手法を開発し、効率的なシステム実装も行う。本手法により、様々な反応系における2.量子論的遷移状態の探索および遷移状態制御による設計指針を与え、実験グループにフィードバックする。本年度は一昨年度に続き、以下の項目を実施した。 1.量子論的遷移状態および量子論的反応経路の確立: ストリング法の実装および高度化を行い、NEB法に比べてより効率的に反応経路が求まることを確認した。多成分系分子軌道法および多成分系密度汎関数法と組み合わせることにより、プログラムの整備および高度化を行った。さらに昨年度に引き続き、周期境界モデルによる電子状態と、吸着サイトにおける水素の量子効果を考慮した部分的な高精度量子化学計算を組み合わせた、平面波局在混合基底系ONIOM計算手法を開発・実装を行った。 2.量子論的遷移状態の探索および遷移状態制御による設計指針: 分子内水素転移反応や水素引き抜き反応に対する量子論的遷移状態を探索することに成功した。具体的には、F + (H2O)n → HF + OH(H2O)n-1 (n = 1-3)に対して、水素原子核の量子揺らぎを含めた有効エネルギー超曲面における量子論的反応経路を解析した。本手法を用いることで、活性化障壁は従来法による値よりも小さくなり、特にH2Oによる引き抜き反応では、活性化障壁が消失する可能性が示唆された。またピルビック酸のケト・エノール互変異性反応における核の量子効果、およびH/D同位体効果を理論的に見出すことにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NEB法やストリング法を実装・高度化し、多成分系分子軌道法および多成分系密度汎関数法への導入、および既存プログラムへの実装も行った。分子内水素転移反応や水素引き抜き反応等、既に多数の具体的計算を実施し、量子論的遷移状態を求めることを可能とした。既に論文として受理されており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる理論開発およびプログラム実装だけでなく、数多くの応用計算も実施していきたい。特に、周期境界モデルによる電子状態と、吸着サイトにおける水素の量子効果を考慮した部分的な高精度量子化学計算を組み合わせた、平面波局在混合基底系ONIOM計算手法の具体的な計算を実施する。
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Causes of Carryover |
本研究課題を実施するにあたり、当初、初年度から博士研究員を雇用する予定であった。しかしながら初年度採用予定の博士研究員が、就任直前に就職先が決定してしまい、初年度に本研究課題遂行のための適切な人材をみつけることができなかった。一昨年度(2年目)、昨年度(3年目)に博士研究員を雇用したものの、初年度からの繰越金が未だ余っており、次年度に繰り越したい。また本年度に終了予定であった「金属表面上での水素分子解離吸着機構」の計算が未だ不充分であるため、次年度は本テーマを中心に、関連した成果発表も含めて実施予定である。
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