2020 Fiscal Year Research-status Report
チェーンウォーキングを活用するための遷移状態制御による触媒設計に関する研究
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15KT0069
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河内 卓彌 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70396779)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2022-03-31
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Keywords | チェーンウォーキング / パラジウム触媒 / アルケン交換 / βヒドリド脱離 / 反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、1,10-フェナントロリンパラジウム触媒を用いた場合のチェーンウォーキング機構に関する詳細な理論化学計算を行った。とくにAFIR法を用いることで効率的な遷移状態の探索が可能となったアルケン交換過程についての検討を行った。まず、種々の置換パターンをもつアルケンが配位したヒドリドアルケン錯体が、末端アルケンとの会合的置換反応を起こす場合の機構について検討した。シスアルケン錯体の場合には末端アルケンが配位して五配位中間体を生成する過程、トランスアルケンの場合には五配位中間体からトランスアルケンが解離していく過程がそれぞれ高いエネルギー障壁を与えていたが、シスアルケンのほうがややアルケン交換を起こしにくいことが示唆された。また、三置換アルケンの場合にも、シスアルケンと同様に配位段階の障壁が比較的高くなった。さらに、末端アルケンの配位したヒドリドアルケン錯体に対して、各種アルケンを作用させた場合についても比較したところ、末端アルケンよりもシスアルケンや1,2-二置換アルケンのほうが置換しやすいことが示唆された一方、トランスアルケンや三置換アルケンは比較的交換しにくい結果となった。いずれのアルケンの場合にも、チェーンウォーキング機構、すなわちアルケンの回転、挿入、βヒドリド脱離等の過程と比べて、アルケン交換過程のエネルギー障壁は高いことが示唆されており、本触媒系ではチェーンウォーキングが、途中段階でのアルケン交換を含まない非解離型機構で進行しやすい結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チェーンウォーキング機構におけるアルケン交換反応についての理論化学計算については検討が進んでいるが、計算結果を実証するための実験検討がまだ十分に行えていない。また、アルケン交換過程の遷移状態探索等に用いているAFIR法では必要な計算量が多いことが課題であったが、計算機の増設により今後はより多くの基質を用いた検討が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
チェーンウォーキング機構におけるアルケン交換反応についての理論化学計算の結果を踏まえ、結果を実証するための実験を重水素標識実験などにより引き続き検討する。また、理論化学計算による更なる触媒検討による新規触媒設計も進める。
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Causes of Carryover |
実験化学的な検討については、いくつかの重水素化基質の合成を行い検討してきているが、結果の分析が困難であるなどの課題がまだ解決に至っていないことに加えて、今年度に十分な実験検討を行うことが困難であったため遅れている。次年度は、上記基質の再設計や合成法などに関するさらなる工夫をすることで、研究を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)