2017 Fiscal Year Research-status Report
概日時計を創る:1細胞計測と操作による細胞ネットワークの再構築
Project/Area Number |
15KT0072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
榎木 亮介 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (00528341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 快洋 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90399824) [Withdrawn]
繁富 香織 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (90431816)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 概日リズム / カルシウム / 視交叉上核 / イメージング / 神経細胞 / MEMS / マイクロパターン基盤 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題では、Micro Electro Mechanical Systems (MEMS)を利用した微細加工技術を駆使し、哺乳類の概日リズムの中枢である脳視床下部の視交叉上核の神経細胞を単離して長期培養を行い、神経細胞の数、位置、形を自在に制御して細胞ネットワークを基盤上で再構成することで、視交叉上核の単一神経細胞から神経ネットワークのリズム発振メカニズムを構成的に理解することを目指して研究を行ってきた。 これまでに、培養する神経細胞の数を厳密に制御することができるマイクロパターン基盤を作成する技術基盤を確立した。少数の神経細胞を基盤のウェル上に長期的に培養し、長期培養しても細胞が隣のウェルに移動したり軸索突起を伸ばすなどせず、単一神経細胞のみをウェル内に孤立させることができることを確認した。アデノ随伴ウイルスを用いて遺伝子コード型の高感度蛍光カルシウムプローブを神経細胞特異的に感染発現させ、単一の神経細胞から長期間(数日間)光イメージング計測を行い、概日カルシウムリズムを計測した。さらにPC制御とXYステージにより、パターン基盤上の多数のウェルの神経細胞から一挙に光イメージング計測を行うことができるハイスルーアウトプットな実験系を確立した。概日リズム分野で普及している発光イメージング計測と比較して、一挙に多量のデータの取得が可能となった。また透過光像および実験後の免疫染色画像により、1個から数個の神経細胞のみ存在するウェル、グリア細胞のみ存在するウェル、神経細胞とグリア細胞が共在するウェルを確認した。その結果、他の神経細胞やグリア細胞とは直接の物理的接触のない単一神経細胞のみでも安定でロバストで概日リズムが長期間継続することを見出した。この実験結果は、これまでの単一神経細胞のリズムは不安定でばらつくとする定説とは異なり、視交叉上核の神経細胞は1細胞のみでも安定な自律振動能を持つことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、微小加工技術によるマイクロパターン基板の作製、および、単一神経細胞培養と概日リズム測定の研究手法を確立し、本研究課題の目的を達成した。この手法を用い、多数の単一神経細胞から一挙に光イメージング計測することを可能とし、従来の計測法と比較して飛躍的に取得できるデータ数が増加した。その結果、哺乳類の概日リズム中枢の単一神経細胞の概日リズム特性を詳細に解析することが可能となり、概日リズム発振メカニズムの本質に迫る結果を得ており、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究課題の当初の目的を達成した。現在、本研究で得られた単一細胞レベルの概日リズム計測の研究結果を論文としてまとめている。研究期間を延長して繰り越した研究費は、論文投稿と英文校正の為の費用に支出し、必要に応じて追加実験を行う。
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Causes of Carryover |
これまでに当初の目的である光イメージング計測と微細加工技術を用いた生物時計の1細胞計測を達成し、論文化を進めている。繰り越した経費は、論文投稿費用および英文校正費用、および追加実験のための費用に支出する。
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