2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現ゆらぎの適応的意義 - ゆらぎと遺伝性の構成による理解
Project/Area Number |
15KT0075
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若本 祐一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30517884)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝子発現ゆらぎ / パーシスタンス / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から引き続き、比較的数短い時間スケールで起こる抗生物質などの薬剤に対する細菌のパーシスタンス現象と、さらに長期間にわたって起こる薬剤への順応現象の解析を進めた。 大腸菌のパーシスタンス現象の解析では、クローン集団中に存在するごく低頻度のパーシスターを検出するため、10^5以上の細胞の薬剤応答を1細胞レベルで一挙に観察できる計測系を立ち上げた。その計測系を用いた実験により、大腸菌のパーシスターには多数の生存モードが存在することを突き止めた。具体的には、古典的なドーマント細胞が生き残るモードだけでなく、バルジを形成し分裂を繰り返しながら生き残るモードや、薬剤投与に応じて成長を停止し生き残るモードなどを見出した。この結果は、パーシスターはドーマント細胞であるという従来の見解に対し、それ以外にも様々な生き残り戦略があることを示唆している。 長期の薬剤順応の解析では、リボソームの大サブユニットと小サブユニットのバランスが、薬剤投与によって崩れるものの、順応する細胞系列では、そのバランスが回復することを明らかにした。前年度までの研究で、細胞内のグローバルな状態変化が順応に関わることが示唆されていたが、その具体的なプロセスとして、リボソーム分子の構成バランスの回復が見えてきた。 さらに細胞系譜解析の理論研究では、細胞集団の増殖率が「細胞の内因的成長率」と「選択強度」に分解できることを明らかにした。細胞系譜から計算できる選択強度は、細胞系譜を時間順方向で見るか、時間逆方向で見るかによって変化する統計の差(カルバック-ライブラー情報量)として定義されるが、これが集団内の選択に由来する集団増殖率の増加分と直接対応していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究期間を通じて、パーシスタンス現象や長期順応現象に関して、当初想定していなかった新しい知見が得られ、これが契機となり、さらに詳細に現象を理解するための追加研究を行なっている状態である。今年度中にこれらの追加解析も含め、成果を公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の追加解析を、今年度前半で終了させ、これらの成果を複数の学術論文にまとめる。また、本研究で得られた知見をもとに、異なる時間スケールで考えられてきたパーシスタンス現象と長期順応現象の関係を明確にし、短期的な表現型適応と長期的な耐性菌の進化の関係について包括的に整理する。これらの結果は、総説論文として整理し、細菌の適応や薬剤耐性などの研究を行なっているコミュニティへと広く発信する。
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Causes of Carryover |
前年度までに本研究課題の成果をまとめた論文を投稿する予定であったが、追加解析を行うことになったため、それに必要であった論文投稿料が前年度までに使用されなかった。研究期間を延長した最終年度である今年度に論文を投稿し、これを予定通り使用する予定。
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[Journal Article] Linear Regression Links Transcriptomic Data and Cellular Raman Spectra2018
Author(s)
Kobayashi-Kirschvink, K. J., Nakaoka, H., Oda, A., Kamei, K. F., Nosho, K., Fukushima, H., Kanesaki, Y., Yajima, S., Masaki, H., Ohta, K., Wakamoto, Y.
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Journal Title
Cell Systems
Volume: 7
Pages: 104-117.E4
DOI
Peer Reviewed
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