2017 Fiscal Year Research-status Report
誘引場と動きから生まれる協同的パターンの構成的操作と理解
Project/Area Number |
15KT0076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 哲 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20500367)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 細胞運動 / 走化性 / 細胞性粘菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞運動のモデル種である細胞性粘菌Dictyostelium discoideumでは数万個の細胞が走化性誘因物質としてサイクリック AMP(cAMP)を自己分泌的に放出する。細胞全体で応答と放出のリズムが揃うことで、回転しながら外側に伝播するcAMPのらせん波が自己組織的に形成され、これに向かう方向(順方向)の走化性によって細胞が集合する。本研究課題では、単一細胞レベルのシグナル応答の動作原理と自己組織化の数理に立脚し、光による分子活性制御を用いて介入することで、細胞性粘菌のcAMP回転らせん波と細胞の動きをそれぞれ順方向、逆方向、さらには停留とリアルタイムに操作し、自己組織化されるパターンがとりうる多様な表現型空間を構成的に明らかにすることを目的とした。第2年度は、初年度に開発した、光依存的に低分子量GタンパクRasやRacを活性化させるオプトジェネティクスの系を、利用し、細胞変形に与える影響などを中心に、その基本動作をライブセルイメージングを中心に調べた。また、これまで調べてきた、マイクロ流体デバイスを用いた人工的なcAMP波への走化性応答とは異なる振る舞いを探索すべく、cAMPとは別の走化性誘引分子の進行波刺激への応答を解析し、これまで知られていない負の応答性、濃度の時間変化に対する細胞のターニング運動の存在を明らかにし、これを特徴付けた。また、こうした特徴とRas、Rac、PI3キナーゼのベーサル活性との関係について解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RasやRacの活性化を人為的に導入する系では、細胞の増殖への影響があると考えられ、形質転換体が得難く、得られても発現が弱いなどのハードルに直面したため、比較的制御がうまくいっているRacの光操作の系にしぼり、解析をすすめた結果、走化性によって遊走中の細胞でのRacの活性化によって、先導端の幅が大幅に増加し、多くの場合二手に分岐する現象を発見した。一様な光刺激によっても、細胞の後端では仮足形成を誘導できないことから、細胞後端ではRacの下流のシグナル経路の抑制が強く働いていることが示された。オプトジェネティクスの系は細胞性粘菌では未開拓な手法であり、青色光によるネイティブな応答が引き起こさないよう、弱い光による操作が求められる。このための条件だし(光強度、時間、回数)に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
オプトジェネティクスの系は、継続して進めていく。細胞性粘菌ではRac非依存で、細胞間接着によるScar/WAVEの調節、さらにはcAMPのリレー応答の調節がおこなわれている可能性があり、これについて当方の知見を活かしたオプトジェネティクス系の開発を試みる。cAMPリレー応答についての操作について遅れており、AMPの分布を操作するための手法の検討を行う。特に、生物学的には集合塊におけるcAMPの分布が、子実体のパターンの特徴を大きく決めていると考えられ、この時期の分化した細胞について、単一細胞における倍変化検出特性への影響、不応期への影響を解析し、波の周期や形状への効果を測定する。
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Causes of Carryover |
光操作系の開発と光操作の条件だしに予定より時間を要したため。
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Research Products
(27 results)