2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0084
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡田 眞里子 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (10342833)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 分子動態 / シグナル伝達 / 転写制御 / システム生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、以下のことを行った。 1. 時系列遺伝子発現解析とChIP解析: 抗IgM抗体で刺激したマウス初代免疫B細胞を用いて、以下の次世代シーケンス解析を行った。(1) mRNAシーケンス:刺激後6時間まで15分毎にサンプリングを行った。(2) ChIPシーケンス:NF-κB(RelA p65)およびヒストンアセチル化(H3acetylK27転写活性化)に対する抗体を用いて免疫沈降を行い、細胞サンプリング(0, 60, 120分)を行った。mRNAシーケンスに関しては、バイオインフォマティクス解析を行い、無処理時と比較して発現変動遺伝子を抜き出し、その後、時系列パタンの違いにより遺伝子群を分類した。発現パタンは早期発現遺伝子、中期発現遺伝子、後期発現遺伝子を含む約5つのクラスタに分類された。発現パタンを注意深く解析することにより、NF-κB核内移行の振動と位相をずらしながら発現する振動遺伝子が複数同定された。ChIPシーケンスに関しては現在解析を進めている最中である。 2. 細胞イメージングによるNF-κBの動態計測: 蛍光標識NF-κB(RelA p65)のノックインDT40細胞を用い、生細胞中におけるNF-κBの核内移行の時系列動態を1細胞計測した。その結果、NF-κBの核内移行は時間とともに上昇し、いまだ振動は観察されていない。NF-κBの核内移行の振動は同じ細胞を用いたウェスタンブロットの実験では観察されており、実験条件により結果が異なる結果となってしまっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.時系列遺伝子発現解析では当初の予定であったDT40培養細胞ではなく、マウス初代B細胞を用いることとした。より生理学的な系を求めての理由であったが、そのため、一度の実験でChIPのサンプル数を多く取ることが難しくなってしまった。その代わり、mRNAシーケンスのサンプリングを密にすることにより、いくつかの遺伝子がNF-κBの核内移行に合わせて振動していることを見出すことができた。これにより、世界に先駆けて、NF-κBの振動によるmRNA発現制御の実体を掴めたように思われる。今後、ChIPシーケンスのバイオインフォマティクス解析を進め、この結果とmRNA発現の時系列パタンを比較統合することにより、NF-κBの振動による遺伝子発現制御機構を明らかにすることが可能だと考えている。 2.細胞イメージングに関しては、予想に反し、NF-κB(RelA)が一細胞中で振動せず、核内移行が時間とともに増強する結果となった。RelAの発現量の初期値や観測時の温度が振動動態に影響する可能性があることから、過剰発現、ノックインなどのRelA発現量の調整および実験条件の検討を行いながら、NF-κBの核内移行振動を一細胞レベルで観察できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の研究を進めていく。 (1)免疫B細胞抗原刺激後のNF-κBおよびヒストン修飾の時系列クロマチン免疫沈降(ChIP-seq)解析によるNF-κBの網羅的DNA結合部位と標的遺伝子の同定とその発現の時間変化 (2)NF-κBの細胞質・核内移行のイメージング解析によるNF-κBの振動解析 (3)NF-κBシグナル伝達系の連続微分方程式モデル構築、シミュレーション、細胞操作による遺伝子発現解析(検証)によるNF-κB振動による遺伝子発現制御の仕組みの解明(検証) ChIPシーケンスに関しては、現在様々なシーケンス手法が報告されていることから、多数の細胞数を得ることの出来ないB細胞から有効に結果を得るためにも、必ずしも古典的なChIPシーケンスに拘わらず、一細胞のエピジェネティクス状態を知ることのできるATACシーケンス(Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high throughput sequencing)など他の手法も取り込みながら解析を進めていきたいと考えている。
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