2015 Fiscal Year Research-status Report
災害被災地における復興過程と高齢者の生活知の継承に関する研究
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15KT0092
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
福井 庸子 大東文化大学, 経営学部, 講師 (90409615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 紀和 大東文化大学, 経営学部, 教授 (80320084)
高桑 史子 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 客員教授 (90289984)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 自然災害 / 災害復興 / 記録化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は自然災害とその復興の記憶をいかに継承していくかについて多面的に検討をした。自然災害が起こる頻度は、数十年に一度の場合もあれば数千年に一度の場合もある。また、自然災害の記憶を継承する主体も、自然災害を被った当事者、被災地、そして直接的に被害を被っていない地域および人々と多様である。こうした自然災害の特質ゆえに「災害および復興に関する記憶の継承」を一面的にとらえることは困難であり、個々の特質に考慮した継承のあり方を検討する必要がある。以上の問題意識に基づき、平成27年度は災害被災地以外の地域から向けられた眼差し、被災地における災害、災害復興の記録化の試み、被災した当事者の災害・復興に関する語りを収集した。 第一の点について特に日本以外の地域から被災地に注がれる視線のあり方について考察を行った。具体的には海外で開催された災害に関する文化人類学や地理学等の研究報告やワークショップに参加し、災害被災地から離れた地域がいかに他国の災害を見つめ、何に着目しているのかについて考察した。 第二の点については、中越地震における災害の記録化の動きに着目して調査を行った。中越地震から10年が経過した当該地域では、災害とその復興の記録化が積極的に進められている。具体的には長岡震災アーカイブセンターきおくみらいや、おぢや災害ミュージアムそなえ館、川口きずな館、やまこし復興交流館といった中越地震の全体像を伝える中越メモリアル回廊を見学し調査した。 第三の点については三宅島の高齢者施設において現在の生活や災害および災害以前の生活についての聞き取りを実施した。また東日本大震災被災地の復興状況と現在の課題に関して情報収集ならびに意見交換のため、岩手県山田町と後方支援基地となった遠野市、宮城県石巻市で調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は研究代表者の家庭の事情から長期にわたる調査の実施が不可能であったため、当初予定していたフィールド調査を行うことが困難であった。上記の課題を克服すべく、資料の収集および、これまでの調査で得られたデータの分析に注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果を発展させながら問題関心を深めていく。第一に災害および復興のプロセスの記録化の実践(ミュージアムや記録集等)を調査分析する。東日本大震災から5年、中越地震から10年、三宅島の噴火から16年が経過し、災害とその復興に関する記録化が蓄積しつつある。これらの記録のもととなる事実や記憶を抽出している主体は誰か、誰を主たる受け手として想定しているのか、記録する価値のあることがらとは何か。以上を具体的な事例に基づき検討する。また、記録化からこぼれ落ちていく記憶や事実とはどのようなものかについても明らかにしたい。 第二に被災した地域住人の現在の生活や生活課題の調査を実施する。生活スタイルや生活課題は世代や居住する地域による相違が予測される。平成28年度は高齢者の生活と抱える生活課題に着目し、生活課題が地域で意識化されているのか、それとも個々人の問題として表出しないままになっているのかについて検討する。 第三に高齢者に蓄積された過去の生活規範や伝承、ふるまい等の聞き取りを行う。地域での生活を維持するために必然的に生まれてきたであろう過去の生活規範等を聞き取ることにより、地域の生活のなかで何が重視されていたのか、その一端を明らかにすることが可能となる。同時に、これらの知識が現在、地域のなかでどの程度、異なる世代に継承されているのかについて調査を実施する。 以上を通して、災害被災地において共有化され継承される知識や事実、個々人のなかに沈殿し表出されない、もしくは継承されない感情や知識、事実について考察を深める。
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Causes of Carryover |
平成27年度は研究代表者の家庭の事情により宿泊を伴うフィールド調査を実施することが不可能であったために予算の執行を十分に行えなかったため、これまで収集した資料、問題点の整理、東京での資料収集に注力した。したがって旅費の利用が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は災害被災地の記録化の動きに関する情報と資料を収集するために災害被災地への調査を実施する。具体的には中越メモリアル回廊(長岡ー長岡震災アーカイブセンター きおくみらい・小千谷ーおじや震災ミュージアム そなえ館・川口ー川口きずな館・山古志ーやまこし復興交流館 おらたる・妙見メモリアルパーク・木籠メモリアルパーク・震央メモリアルパーク)、岩手県大船渡市の潮目 大津波資料館、東京都三宅島のジオパークにおいて資料の収集や聞き取りを行う。 上記外にも災害被災地における生活の現状と生活課題の把握、地域の伝承や行動規範等の聞き取りなどを高齢者に実施するため、各地へのフィールド調査を行う予定である。
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Research Products
(7 results)