2016 Fiscal Year Research-status Report
微生物の集団挙動に対する運動論モデリングと階層性の探究
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15KT0110
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
安田 修悟 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (70456797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 一生 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (10115777) [Withdrawn]
西畑 伸也 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (80279299)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 計算科学 / 数理生物学 / 走化性バクテリア / 運動論 / マルチスケール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では走化性運動論モデルを用いて,理論とシミュレーションの比較を通して,走化性バクテリアの集団挙動における物理的,数理的な階層構造を明らかにすることを目的としている. これまでに,具体的に,走化性運動論モデルに基づく走化性バクテリアの運動に対するモンテカルロシミュレーション法を開発し,走化性バクテリアの密度進行波とパターン形成の問題に対して理論的,数値的な研究を行ってきた.走化性バクテリアの密度進行波の問題に対しては,実験とシミュレーションの比較を通して,運動論モデルの妥当性を検証すると伴に,運動論モデルから漸近解析によって理論的に導出される従来のマクロモデル(Keller-Segelモデル)に対して運動論モデルの漸近的な振る舞いを数値的に明らかにした. 平成28年度には,走化性バクテリアのパターン形成の問題に新たに取り組み,走化性バクテリアの密度分布が一様な状態から周期的なパターンを形成する数理的なメカニズムを明らかにした.具体的には,走化性運動論モデルの線形不安定性解析を行い,走化性バクテリアの密度が一様な状態から,ある特定の波長をもつ揺らぎが不安定化しパターンが形成される数学的な条件(不安定性条件)を見いだした.さらにパターン形成のモンテカルロシミュレーションを実行し,その不安定性条件の下で,実際にバクテリアの密度が一様な状態から周期的なパターンが形成されることを明らかにした. これらの一連の研究成果は,計算科学を専門とする代表者が数理科学を専門とする数学者との共同研究において得ることが出来たものであり,特にフランス・パリの数理生物を専門とする応用数学者との連携において重要な成果があった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績欄に記載の通り,平成28年度は,走化性バクテリアのパターン形成の問題に対して重要な成果があり,平成27年度の成果と合わせて当初の研究計画で予定していた具体的な2つの研究テーマ(走化性バクテリアの進行波とパターン形成)に対して順調に研究が進展している.また,フランスの応用数学者との共同研究においては,平成28年度は代表者がパリ第6大学のジャック=ルイ・リオンス研究所での長期研究滞在を実施することができ,数学者との連携という点において研究開始当初に計画していた以上に大きな成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
代表者は,平成28年度9月より数理生物学分野で顕著な研究成果を挙げているパリ第6大学のジャック=ルイ・リオンス研究所での長期研究滞在を実施しており,研究テーマに対する成果と伴に数学者連携,学際連携という点においても重要な成果を挙げている.平成29年度も前期は引き続きパリに滞在し,学際連携・共同研究の関係をさらに深化させる.共同研究を引き続き発展させながら,これまでの研究成果を基に,より発展的な課題に挑戦する.
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Causes of Carryover |
論文執筆・出版にかかる予算として年度末に執行を計画していたが,当初予定より執筆が若干遅くなったこと,また投稿する学術雑誌を直前に変更することになった為,予算の執行計画に変更が生じた.費目を変えて年度末に予算を執行するよりも,当初予定していた目的を変えず次年度に予算を執行するのが研究期間全体を通して考えたときにより適切であると考えたために,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
元々計画していた通りに,論文執筆・出版にかかる費用として計上している.
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Research Products
(9 results)