2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0117
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 伸英 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40377651)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマスの好気性発酵によるCO2供給 / 異なる窒素源による発酵への影響把握 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は廃棄物系バイオマスを微生物により好気的に発酵させ、生成する二酸化炭素やその他の揮発成分を施設栽培で植物に供給し、収量の著しい増大を実現できる栽培技術の確立を目指している。 H27年度は、異なる種類のバイオマス原料について、発酵速度および生成ガス組成の調査を行った。調査したバイオマス原料は、木質系バイオマスとしてカラマツ、農業系廃棄物バイオマスとしてトマトの栽培残渣である。カラマツはC/N比が600程度と高く、そのままでは良好な好気性発酵を起こさないため、窒素源として発酵鶏糞、硫安、尿素を添加した。それぞれの窒素源をC/N比が16になるようにカラマツのかんな屑に添加し、含水率を60%に調整した混合試料を2Lの反応容器に入れ、温度が40℃になるよう制御した。試料の下方より空気を供給し、反応容器通過前後の酸素濃度から発酵速度を求めた。通過後のガスを採集し、CO2およびアンモニアの濃度を測定した。いずれの窒素源の場合でも、実験開始後、発酵速度が急激に増大し、2日で最大値に達し、その後低下する様子が観察された。3種類の窒素源の中では発酵鶏糞が最も発酵速度が高かった。反応器通過後のCO2濃度は発酵速度と同様の挙動を示し、好気性発酵が良好に起こっていることが確認された。また、発酵鶏糞の場合では、CO2濃度の最大値は約50000 ppmに達し、10000 ppm以上の濃度が約4週間継続した。これより、栽培に十分なCO2濃度のガスを十分な期間供給できることが明らかとなった。 一方、トマトの栽培残渣の場合は、単独でもC/N比が10-20と低いため、窒素源を添加せずに発酵試験を行った。発酵速度、ガス中のCO2濃度の時間変化はカラマツの場合と類似の挙動を示したが、高濃度のアンモニアが検出された。これより、トマト残渣を使用する場合にはアンモニア除去工程の導入が必須であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は異なるバイオマス原料として、カラマツとトマトの栽培残渣について、好気性発酵を起こすための条件を探索し、発酵挙動を把握するとともに、生成するガス組成を分析し、植物栽培に供給可能であるか調査した。その結果、カラマツについては発酵ガスを植物栽培に利用できることが明らかとなったが、トマト残渣の場合はアンモニアの除去が必要であることが分かった。このように、栽培試験の準備段階として発酵ガスの供給に関する知見は蓄積された。しかし、初年度のうちに発酵ガスを供給した栽培試験を開始する予定であったが、実施することができなかった。そのため、進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カラマツを発酵原料とした場合の発酵条件、発酵挙動、生成ガス中のCO2濃度が明らかとなったので、それらの情報に基づき、発酵ガスを植物に直接供給し栽培試験を行う。栽培する植物としては、遺伝子情報がすべて解読されているシロイヌナズナを用いる。また、比較として、CO2濃度が大気レベルであるガスを供給した場合、および、発酵ガス中に含まれるCO2濃度と同じCO2濃度のガスをボンベより供給した場合の栽培試験も行う。特に、後者の試験では、発酵ガス供給の栽培試験との結果を比較し、CO2以外のガス成分による成長への影響の有無を調査する。 一方で、発酵ガス中に含まれる微量成分、特に、植物成長を促進すると報告されているアセトインやブタンジオールなどの揮発成分の有無について、GC-MSを用いて調査する。
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Causes of Carryover |
発酵ガス中に含まれる微量の揮発成分分析のためにGC-MS用のカラムを購入予定(40万円)であったが、まずは発酵条件の探索および多量に含まれるCO2、アンモニアの生成挙動の調査を優先したため、微量成分の分析に至らなかった。また、カラムの選定のために時間を要したため、購入に至らなかった。また、栽培試験を行う予定であったが、これを行えなかったため、消耗品として予定していた20万円を繰り越すこととなった。また、物品費に計上したセンサー、ロガーが予定より小額で購入できたこと、学会参加旅費が予定より少額で済んだことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度請求額と合わせて以下執行予定である。今年度購入できなかったGC-MSのカラムを購入する。また、栽培試験を開始するため、そのための物品、消耗品として使用する。また、European Biomass Conference & Exhibition (オランダ), 第3回アジアバイオマス科学会議(マレーシア)などの国際会議への参加を予定しており、その旅費、参加費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)