2016 Fiscal Year Research-status Report
旧ソ連諸国の戦争記念碑比較研究:権威言説の視覚化と地域性
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15KT0125
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
前田 しほ 島根県立大学, 北東アジア地域研究センター, 研究員 (70455616)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 記念碑 / ソヴィエト / 戦争 / 記憶 / ナショナリティ / 愛国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、旧ソ連の戦争記念碑を中心に戦争記憶を調査し、愛国主義とナショナリティの統合を比較・分析・考察するものである。二年目である平成28年度は主要な現地調査として、コーカサス地方のアルメニア・グルジア調査を実施した。アルメニアでは首都エレヴァンにおける第二次大戦の記憶のほか、第一次大戦の虐殺の記憶や、アゼルバイジャンとの紛争についても調査を行った。グルジアでは首都トビリシの記憶調査を行った。ここでも第二次大戦の記憶のほか、アブハジアや南オセチアをめぐるロシアとの紛争の記憶についても調査を行うことができた。また地方にも足を延ばし、スターリンの生誕地ゴリに保存されているスターリン博物館やグルジア軍用道路を調査した。 また、国際会議での発表の機会を利用して、スモレンスク・モスクワを再訪し、一年目の調査では時間的制約により訪問がかなわなかった博物館・記念碑を網羅することができた。 同様に、国際会議で訪問の機会を得たウラジオストク及びワシントンにて主要な記念碑と博物館を調査し、ロシア極東の地域性と、非社会主義国における戦争記憶のアイデンティティの関係性を調査・観察することができた。総じて、実り多い現地調査を実施することができた。 研究過程及び成果の国際的発信として、海外の国際会議における発表を3本行った。国際的に権威のある学術誌ないし論文集に投稿・寄稿するためペーパーをブラッシュアップしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、各年度旧ソ連地域の調査を実施するという研究計画は、これまで順調に遂行している。ロシア国内では、モスクワだけでなく、スモレンスクや極東のウラジオストクのような地方都市調査を実施することができた。また、冷戦のもう一方の雄であるアメリカの首都ワシントンでの調査によって、共産圏の事象を客観的にとらえるための、知見・視野を広げるという意味でも有益であった。 第二に、研究の経過及び成果を国際的に権威のある査読制国際会議で2本、欧米のアジア研究者と現地若手研究者が交流する国際学術セミナーに招待され、発表した(英語及びロシア語)。 このように、現地調査・国際的な成果発信ともに積極的に行い、おおむね順調に進展と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は5月にウクライナ調査を実施する。安全確保のため、治安に不安のある東部(ハリコフ)は避け、南部オデッサ、西部リヴィウ、首都キエフの三か所を調査する。また戦争記憶との比較調査として、災厄の記憶としてチェルノブイリ調査を実施する。当初重要な調査対象としていたクリミア半島への渡航については、事実上困難であるため、見送った。今後国際情勢を見ながら、実施の可能性を探る。 これまでの調査で得た資料調査と分析に力を入れ、論文としての成果発表に取り組むことを目指す。
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Causes of Carryover |
海外調査に係る経費の節約に努めたため、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額については海外調査に係る費用に使用する。
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Research Products
(5 results)