2017 Fiscal Year Research-status Report
旧ソ連諸国の戦争記念碑比較研究:権威言説の視覚化と地域性
Project/Area Number |
15KT0125
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
前田 しほ 島根県立大学, 北東アジア地域研究センター, 研究員 (70455616)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 社会主義 / 記念碑 / ソ連 / 戦争 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、第二次大戦の独ソ戦の記憶について旧ソ連各地の状況を調査することを大きな目的としている。 3年目である平成29年度は、ウクライナ調査を実施した。戦争経験の違いを考慮して、対象地域を東部、西部、南部、中央(首都)の4つに分けたが、紛争地域である東部については安全を考慮し、現地訪問を見送った。したがって今回調査に入ったのは、南部のオデッサ、首都キエフ、西部のリヴィウである。対ロ関係の悪化に伴い、市民感情も悪化し、ソ連時代の記念碑の撤去運動が全国的に進んでいることが確認された。リヴィウでは現地の戦史研究者に案内を受け、戦跡や博物館で説明を受けた。また意見交換を行い、ウクライナの戦争研究の現状についての情報を得た。キエフ調査に際しては、チェルノブイリ原発事故の立ち入り禁止区域にも許可を得て足を運び、原発事故関連の博物館や記念碑も調査対象とした。記憶研究では、大災害と戦争の記憶がしばしば比較されるが、ソ連史においても、独ソ戦と原発事故もパラレルな関係にあること、そして立ち入り禁止区域であるがゆえソ連時代の事物が手つかずで残されていることの二点の理由による。 そのほか、戦争記憶の比較研究のため、中国(長春・ハルピン)、韓国(釜山・仁川・板門店)、ベトナム(ハノイ)調査を実施した。国内でも、北海道大学にて資料収集を行った。 調査の蓄積が進んだため、旧ソ連の記念碑を都市構造と関連しての考察を進め、学会・研究会での口頭発表を二本行った。 研究組織活動にも取り組んだ。上記の研究会での発表は、研究代表者が研究会を組織・運営したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は毎年現地調査をすることとし、初年度はロシア、二年目はコーカサス(グルジア・アルメニア)、三年目はウクライナと順調に進んでいる。比較考察のため、ソ連以外の旧・現社会主義国や、資本主義国の戦争記憶やプロパガンダについても、機会を得て調査を行い、幅広い知見を得ることができている。調査成果の蓄積に伴い、分析・考察を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
残る二年で、バルト諸国と中央アジア調査を予定している。今のところ、国際情勢に不安要素は見当たらないので、予定通り実施の見込みである。
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Causes of Carryover |
旅費の節約に努めたため、未使用額が生じた。次年度の海外調査旅費に充てる。
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Research Products
(2 results)