2018 Fiscal Year Research-status Report
旧ソ連諸国の戦争記念碑比較研究:権威言説の視覚化と地域性
Project/Area Number |
15KT0125
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
前田 しほ 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (70455616)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 社会主義 / 記念碑 / ソ連 / 戦争 / 記憶 / ミュージアム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、第二次大戦の独ソ戦の記憶の状況を、旧ソ連各地で調査することである。4年目を迎えた2018年度は、バルト諸国(エストニア、リトアニア、ラトビア)、中央アジア(キルギス、タジキスタン)及びコーカサス(アゼルバイジャン)での調査を実施した。ソ連崩壊後の独立の過程や現在の対ロ関係を考慮して、社会主義時代の記憶や紛争・内戦の記憶の調査も合わせて行った。バルト諸国は、ナチ・ドイツ占領地域であると同時にソ連の解放も「占領」ととらえているため、郊外の赤軍墓地・絶滅収容所跡地、旧ゲットーなども調査対象とした。その結果、国民のための記憶、ユダヤ人などへのナチスによる迫害の記憶、ソ連軍の記憶の三つの位相に分類できることがわかった。ロシアとは異なり、ウクライナ西部やポーランドとの共通点が見いだされた。これに対し、中央アジアでは、ロシア銃後地域との共通点が見られるが、独立後の政治路線や周辺国との関係性が影響を与えていることが確認された。例えば、タジキスタンやアゼルバイジャンでは、内戦や紛争の記憶がまだ生々しく、戦争記憶そのものがミュージアムの展示において体系づけられていない。そのほか、地下資源の豊かさが、ソ連崩壊後の都市整備と関連し、アゼルバイジャンでは社会主義時代の記念碑の撤去が進む状況に対して、比較的貧しいキルギスでは、改修が進まず、逆に社会主義時代の記憶がよく保存されていることが確認できた。 そのほか戦争記憶の比較のため、トルコ(イスタンブール)で現地調査、北海道大学でも資料収集を行った。 これらの調査の成果をとりまとめ、整理・分析している。 研究成果のアウトプットとしては、欧文論文一本が刊行され、次年度刊行予定の共著単行本の準備をおこなった。 研究組織活動にも取り組み、社会主義圏の文化に関する研究会一本を企画・運営した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎年現地調査を進めており、2018年度は首都のみであるが旧ソ連6か国の調査行った。初年度のロシア、二年目のコーカサス(グルジア、アルメニア)、三年目のウクライナと合わせて、かなりの地域を網羅することができた。幅広く知見を広めると当時に、地域差を確認することができ、分析と論考を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度は、中央アジア(カザフスタン、トルクメニスタン)調査を計画している。またこれまでの成果をとりまとめ、学会発表、論文の執筆、投稿を目指す。
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Research Products
(1 results)