2016 Fiscal Year Research-status Report
紛争経験地域における暴力レジリエンス:若年者の帰属意識形成と疾病傷害リスクの低減
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15KT0128
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
清野 薫子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10508336)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アフガニスタンで生活環境調査、健康調査を実施するとともに、イエメン共和国、ベトナムフエ市の世帯調査の解析を行った。 アフガニスタンカブール市において、カブール市内のすべての学校男女教員を対象に質問紙調査ならびに身体計測を行い、210学校(小学校20, 中学校41, 高等学校149)の教員から600名が参加した。質問紙調査は、紛争時の暴力経験、食糧、水、住居の確保状況、現在の健康状態(主観的健康観、メンタルヘルス、怪我・傷害、非感染症による受診状況)、学校教育を通じた地域、社会への連携稠密についての聞き取りを行った。紛争時の経験と、現在の健康状態、非感染症の予防行動との関連についての分析を実施している。 昨年度にフエ市で実施されたソーシャルメディアの活用、帰属意識、健康情報の収集手段についての聞き取り調査について、18歳から60歳の住民993名の解析を行った。ソーシャルメディアを媒介とした健康情報の取得は全体の32.9%であった。また、現在の健康状態、収入、加入保険の種類にかかわらず、健康情報の取得は高い受診率、入院率との関連が認められた。 イエメン共和国では、近年の内戦に伴う治安の悪化に伴い、貧困の深刻化と食糧供給の不安定化による子どのもの健康影響が懸念されている。2013年にイエメンの農村地域で実施されたYemen Baseline Survey of Mother and Child Healthに参加した5歳未満児3,549人を対象に、子どもの低栄養状態と養育環境について、世帯の豊かさと食事摂取状況とは独立に認められる関連性を検討した。子どもに大人が付添わず放置することがない、子どもを労働に従事させない、養育者が妊産婦健診を受けていることは、子どもの食事の摂取状況と世帯の豊かさの影響を調整した後も、stuntingとの有意な関連性をそれぞれ示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定したフガニスタンで生活環境調査、健康調査を実施するとともに、イエメン共和国、ベトナムフエ市の世帯調査の解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
アフガニスタンカブール市のフォローアップ調査、ベトナムフエ市における健康調査および生活環境調査を予定している。現地調査実施にあたり、調査対象地域の保健省、自治体の協力を得て行う。また、調査を実施にあたり治安状況については、現地協力者と密に連絡を取り、必要に応じて実施時期、調査対象地域の再検証を行い、研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
治安状況と天候不順によりアフガニスタンの現地調査の実施開始時期が遅れたため、初回調査後に予定していたフォローアップ調査の今年度実施が不可能であったため、取得データの解析を先に行い、来年度にフォローアップ調査を実施する計画とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度にアフガニスタンフォローアップ調査、ベトナム調査を実施する計画である。現地の研究協力者と事前に調査実施への協力、調査密な連携関係を構築しており、治安、災害状況等の大きな状況変化がない限り、当該地域での調査研究を遂行させる計画である。
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