2015 Fiscal Year Research-status Report
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15KT0132
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (30348841)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 凍結された紛争 / ナショナリズム / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「凍結された紛争(Frozen conflict)」の誕生・存続のメカニズムを明らかにし、その発生をいかに予防できるか、また、解決できるかを検討することを目的としているが、今年度は当初の予定以上の研究を順調にこなすことができた。 8 月に幕張で行なわれた ICCEES(International Council for Central and East European Studies)の世界大会では、アゼルバイジャンのナショナリズムについて報告し、ナショナリズムと凍結された紛争が緊密に関係していることを明らかにした。後日、当該論文は加筆・修正し、査読付きのInternational Journal of Social Science Studies( Vol. 4, No. 5, May 2016)に掲載が決まった。 また、9月にはロシアのクリミアとモスクワで現地調査を行い、ウクライナ危機全般についての理解を深めると共に、クリミア編入が与えたロシアの内政に与えた影響と、クリミア住民の編入に対する思いや編入後の生活、そしてある意味洗脳されていると考えられる状況を含めた総合的な動向を検討し、この調査は多くの凍結された紛争の黒幕であるロシアの論理を理解する上で、重要な鍵を提供してくれた。 最後に、当初計画をしていなかったが、それまでの調査を経て必要性を感じ、北極圏協力の研究を行うために3月にフィンランド・ノルウェーで現地調査を行った。本研究から、地域をベースにしたバレンツ協力や北極圏協力が、一般的な国際政治とは全く異なった論理で動いていることがわかった。加えて、ロシアがその枠組み内では平和的なパートナーとみなされ、ノルウェーとも領土問題を解決していることは注目すべきだろう。それにより、このような事例が「凍結された紛争」の解決や地域のガバナンスを考える鍵になるとも考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、今年度は当初予定していた研究をすべて行うことができ、その研究成果が査読論文の形で発表できるなど、確実な成果を残すことができた。 加えて、当初、予定していなかった、北極圏協力を検討することによって、その平和的なガバナンスを「凍結された紛争」の解決を考える上での良い事例となるのではないかというような手応えを得ることもできた。 また、当初予期していないことも発生した。それは今年度中にも緊張が高まっていた、「凍結された紛争」の一つであるナゴルノ・カラバフ紛争が2016年4月1日に、再燃したことである。停戦から22年、小競り合いは多々あったが、三桁を超える死傷者を出す戦闘となった(4月5日に停戦発効)。また、停戦中であるはずのウクライナ東部でも、度々小競り合いが報告されており、小競り合いの存在は、凍結された紛争が熱戦化する前提として、もっと注目されるべきではないかと考えている次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、5年計画であり、本年度は計画的に研究を進めることができたので、来年度以降も、基本的には当初の計画に沿って研究を進める予定である。 「現在までの進捗状況」で述べたように、「凍結された紛争」の一つであるナゴルノ・カラバフ紛争が再燃したことは、「凍結された紛争」が決して凍結されてないということを証明する新たな事例となった。このことは、「凍結された紛争」を解決することは、やはり世界の安定にとって急務であることを意味する。言い換えれば、本研究の意義はさらに高まったと言えるだろう。 他方、再燃したナゴルノ・カラバフ紛争は、一応の停戦合意が成立したものの、未だに不安定であり、その解決については早急な検討が必要である。 そのため、本来の研究計画に合わせ、ナゴルノ・カラバフ問題についても精力的に研究を行いたい。加えて、東部ウクライナの動向も、重要なケースとして常に状況を掌握しつつ、検討を続けていきたい。また、「凍結された紛争」に関係する新たな動きが出た場合は、研究計画に縛られず、出来うる限り現在進行形の事例を研究に組み込むように柔軟に対応していく予定である。 また、次年度に使用する研究費が生じているが、その理由は、ロシアのクリミア・及びモスクワでの現地調査の際に、他の研究の調査スケジュールを調整し、連続で出張を行ったことにより、研究費の節約が可能となったことによる。次年度、ナゴルノ・カラバフ紛争の緊急な検討など、新たな課題も出ていることから、繰り越した研究費を有効に用いて、新たに増えた研究課題も精力的に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度に本助成金で行うはずであった、ロシアのクリミア及びモスクワでの調査出張の費用の半分を、調査スケジュールを調整することで、別資金によって充当できたため、当初の予定よりも支出を大幅に抑えることが出来た。また、その他として購入を予定していたものも、別資金で充当できたため、本資金に余剰が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画としては、第一に成果報告をより広く行うため、成果報告にかかる費用として使用したい。第二に、前述の通り、ナゴルノ・カラバフ紛争が再燃した一方、当該問題についての研究が国内でも国際的にも極めて薄いため、その研究を行うことは本研究の趣旨に合うだけでなく、国際的なニーズにも対応できるため、ナゴルノ・カラバフ紛争に関する研究も繰越の研究費を用いて進めたい。
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Research Products
(6 results)